【1月8日 AFP】英国の医師団が世界最高峰エベレスト(Mount Everest)に登って血中酸素濃度を測定した結果、史上最も低い酸素濃度が記録されたとする研究結果が、米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」(1月8日号)で発表された。

 この研究結果は、血中酸素濃度の低下を引き起こす呼吸窮迫症候群、嚢胞性(のうほうせい)線維症、肺気腫など重病の長期患者に対する治療を、救命医療に携わる医師らが見直すのにつながる可能性もある。

 ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(University College LondonUCL)の医師団率いるエベレスト登山チームは、標高8848メートルの山頂より少し下がった8400メートル地点で採血を行った。当初は山頂で採血を行う予定だったが、悪天候のため変更を余儀なくされた。

 メンバー4人の鼠径部の大腿動脈から採血し、血液は6400メートル地点に設置されたベースキャンプ内の研究施設に直ちに運ばれ、分析が行われた。その結果、血中酸素の平均濃度は3.28キロパスカルで、標準値の12-14キロパスカルをはるかに下回った。

 チームリーダーのマイク・グロコット(Mike Grocott)医師は、「酸素が薄くなる高地で健康な人を観察することで生理的変化を知ることができ、それにより臨床での救命医療の改善にもつながる。血中酸素の低下は、救命医療においてほぼ普遍的な問題となっている」と述べた。

 また、「登山チームにみられた極めて低い血中酸素濃度は、重篤患者の診療に当たっている医師らが、血中酸素の低い長期患者の治療方針を見直すことにつながる可能性もある」とも指摘した。

 登山家らの血中酸素は、海抜ゼロ地点では死期が迫っている人にしか見られないほど、驚異的に低いのではないかと長い間推測されていたが、今回の研究結果はその説を立証した。

 研究結果によると、高高度では肺に水がたまる肺水腫が起き、これが血中酸素濃度の低下を招くと考えられるという。(c)AFP