【11月5日 AFP】エイズ(HIV/AIDS)のワクチンとして一時は大きな期待が寄せられていた試薬の臨床試験が2007年に打ち切られたのは、試薬がウイルスの感染を予防するどころか、感染率を高める可能性があるとの結果が認められたためだったと、研究を進めていたフランスのチームが3日、米医学誌「Journal of Experimental Medicine」(電子版)に発表した。

 仏モンペリエ国立分子遺伝学研究所(Montpellier Institute of Molecular Genetics)のチームによると、このワクチンは、エイズのウイルスのうち世界的に感染を拡大させているHIV-1に対抗するワクチンとして米医療用医薬品大手メルク(Merck)が開発していたもので、07年9月に第II相臨床試験を行った時点で問題が発覚した。
 
 メルクのワクチン試薬試験は、アフリカ大陸で過去最大のHIV試薬臨床試験として、2007年の2月から9月、南アフリカの5か所の病院で700人のHIV陰性者を対象に行われた。この試験はそれ以前にも2004年以降、米国、オーストラリア、ペルー、ブラジル、プエルトリコなどで実施されていた。

 メルクのワクチンは、抗体を作るためのHIVウイルスを体内に注入する際に、ベクター(媒介)として通常の風邪のウイルスであるアデノウイルス5型(Ad5)の改変型を利用したものだった。ところが、このAd5の抗体があった者ほど、メルクのワクチンでHIV感染率を高めることが第I相臨床試験の3年後に判明したのだ。

 チームによると、霊長類を使い第I相臨床試験を実施していたが、霊長類は自然の状態で人間の風邪にかかることがないため、第I相試験では問題が発覚しなかったという。(c)AFP