【10月22日 AFP】ニュージーランド政府は21日、ブタの細胞を人体へ移植する臨床実験を認可した。糖尿病の画期的な治療法に道を開くものとして期待される。


 異種間移植として知られるこの方法は糖尿病患者にとって大きな可能性を秘めていると、デービット・カンリフ(David Cunliffe)保健相は指摘。「ニュージーランドが糖尿病の治療および異種間移植の双方で、世界のリーダー的立場に立つことができる重要な新技術だ」と強調した。

 バイオテクノロジー企業、リビング・セル・テクノロジーズ(Living Cell Technologies LtdLCT)は、1型糖尿病の治療でインシュリンの分泌を促進するため、ブタのすい臓から採取した細胞を移植したい考えだ。

 LCTによると、前年にニュージーランドのブタの細胞を移植された5人のロシア人患者では、1日あたりのインシュリン注射の必要量が23-100%減少し、うち4人では血糖値が正常に保たれるようになったという。

■心配される感染症

 だが、この技術は糖尿病患者に大きな恩恵をもたらす可能性がある一方で、ブタのウイルスが人体で広がって感染症を引き起こす恐れもあるため、激しい議論を呼んでいる。
 
 ニュージーランド医師会(New Zealand Medical Association)は2005年、移植によりブタのウイルスが人体に感染すると、数百万人が死亡する可能性があると指摘した。これに対しLCTは、細胞は、オークランド島で150年以上にわたり隔離されて飼育された系統の子ブタから採取されるため、そうしたリスクは低減できるとしている。 (c)AFP