【10月5日 AFP】がんの化学療法中にビタミンCのサプリメントを摂取すると、一部の抗がん剤の効果が減少するとの新しい研究結果が、米医学誌『キャンサーリサーチ(Cancer Research)』(10月1日号)で発表された。

 実験室での研究では、あらかじめビタミンCで処理した分離されたがん細胞の死滅率が30-70%減少することが判明した。また、ビタミンCの投与と化学療法を平行して行ったマウスでは、腫瘍(しゅよう)が通常より速く成長することも判明した。研究チームは、同様の効果が人間のがん患者にも当てはまる可能性があるかもしれないとしている。

 多くの抗がん剤は「酸素遊離基」を作ってがん細胞を攻撃するが、今回の研究はビタミンCがこの遊離基を吸収するために化学療法の効果が薄れるのではないかとの仮説を提示した。

 論文の主執筆者である米ニューヨーク(New York)のメモリアル・スローン・ケタリング癌センター(Memorial Sloan-Kettering Cancer CenterMSKCC)のマーク・ヒーニー(Mark Heaney)氏は「ビタミンCのサプリメントは化学療法の治療効果を減少させる可能性がある」と説明する。

 ヒーニー氏は、ビタミンCは細胞が活動を続けるための「動力装置」である極めて重要なミトコンドリアを保護することによって細胞の寿命を延ばす効果があり、通常の細胞にとってきわめて有益だと述べた。しかし、抗がん剤はがん細胞のミトコンドリアを破壊してがん細胞を殺すことを狙っているため、化学療法中はビタミンCが逆効果になるのではないかとの見方を示した。

 これまでの研究では、ビタミンCは抗酸化物質であるため、がん患者によい効果をもたらす可能性があることが示されていた。8月に発表された研究では、マウスに高濃度のビタミンCを注射した結果、腫瘍(しゅよう)が小さくなり、がんの成長が約50%遅くなることが示された。論文では、がん患者はビタミンCが豊富な食べ物など、健康的な食事をとるべきだとしている。(c)AFP