【9月9日 AFP】インドのニューデリー(New Delhi)市当局は、保健衛生対策として、市内を徘徊(はいかい)する牛を過去1年で2万頭捕獲した。市の当局者が8日、明らかにした。

 このような牛の多くは酪農業者が所有するもので、飼育する土地がないために「放し飼い」にされているというのが実情だ。

 デリーの裁判所は、牛の徘徊は交通事故を招くとともに健康上のリスクもあるとして、市当局に対し牛を排除するよう再三求めてきた。

 だが、市内への牛の流入は止まらず、当局は継続的に牛を捕獲している。前月だけで約2000頭が捕獲されたが、捕獲しようとして酪農業者から暴力を受けることもあるという。 

 捕獲された牛は国営の保護施設に送られたのち、競売にかけられる。当局はこれと並行して、数百人にのぼる酪農業者を、酪農に適した別の場所に移住させたい考えだ。

 動物愛護団体は、ヒンズー教で神聖とされる牛たちが、劣悪な環境に置かれていると指摘する。国際動物愛護団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会(People for the Ethical Treatment of AnimalsPETA)」の活動家は、「裁判所は牛の排除を求めるだけで、酪農業の問題点や、道路をさまよう牛たちの苦しみは言及していない」と話す。

 街の牛たちはゴミ捨て場のゴミで食いつなぎ、ポリ袋を食べて死ぬ牛も多いという。胃の中から14キロ分のポリ袋が発見されたケースもある。

 インドでは、大半の州で牛の殺処分が禁止されている。そのため、捕獲された牛の多くが、殺処分が許可されている州へ移送されているという。(c)AFP