【8月29日 AFP】米オレゴン健康科学大学(Oregon Health and Science University)は、マウス胚の遺伝子治療で、内耳の新しい有毛細胞を成長させることに成功したと27日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表した。成人の難聴や内耳疾患の治療への応用が期待される。

 聴覚を司る内耳の蝸牛(かぎゅう)には有毛細胞があり、これが音の震動を電気インパルスに変換して脳に伝える。したがって、有毛細胞やこれに含まれる神経細胞の欠損は、聴覚障害や神経性難聴の最も一般的な原因とされる。

 人間は、誕生時には有毛細胞を約3万個有しているが、感染症、高齢化、遺伝的疾患、騒音、特定の薬剤を使用した治療などにより損なわれる可能性がある。損なわれた有毛細胞は、多くの場合成人になってからは再生されない。

 ジョン・ブリガンド(John Brigande)氏率いるチームは、「Atoh1」と呼ばれる遺伝子をマウス胚の内耳に移植して、非感覚細胞を有毛細胞に変換させることに初めて成功した。 

 マウス胚での成功は、ヒトの難聴および内耳疾患の治療の可能性を開く重要なステップだと、研究は指摘している。(c)AFP