【8月23日 AFP】麻薬中毒の治療薬として期待される「ビガバトリン(vigabatrin)」が、肥満の治療にも効果があるとする米科学者らによる研究結果が20日、医学誌『Synapse(シナプス)』の電子版で発表された。

 研究を行ったのは米エネルギー省ブルックヘブン国立研究所(Brookhaven National Laboratory)のチーム。遺伝子操作で肥満状態にしたラットと体重が正常値のラット計50匹を、食塩水を投与するグループとビガバトリン300ミリグラムを投与するグループに分け、40日間後に体重を量ったところ、肥満ラットで最大19%、非肥満ラットで12-20%の体重減少がみられた。

 この結果について、研究を主導したエイミー・デマルコ(Amy DeMarco)氏は、ビガバトリンがラットの満腹感を誘発したためと考えている。

 ビガバトリンは元来、同研究所のスティーブン・デュウイー(Stephen Dewey)氏が、麻薬中毒の治療薬となる可能性を特定し、その効果の研究を続けてきたものだ。研究過程で、依存症患者と肥満の人々の脳で同様の変化が見られるなど、中毒症状と肥満の間に密接な関連性が示されたことから、ビガバトリンが肥満ラットの抑制不可能な食欲を満たすという仮説を立てた実験を行い、今回の発見につながった。

 デュウイー氏は今回の研究結果について「重度肥満の治療に対するビガバトリンの有効性を示したものだ」と期待する。また、デマルコ氏は「近年の肥満人口の増加を考えると、肥満へのビガバトリンの治療効果の研究は有益だと考えられる」としている。

 同研究所によると、ビガバトリンは現在、コカインや覚せい剤などの中毒患者に対する治療薬として臨床試験の段階だという。(c)AFP