【8月22日 AFP】全世界で推定12億人が現在もトイレを持たず、野外で排便している――。スウェーデン・ストックホルム(Stockholm)で開催中の「2008年ストックホルム世界水週間」の会合で、このような報告が行われた。

 人道支援団体は、深刻な衛生上の問題から開発途上国の人々に野外での排便をやめさせようと、数十年にわたってさまざまな方法で取り組んできた。そうした取り組みにもかかわらず、特にアジアやアフリカでは依然として野外での排便が続けられている。

 国際開発コンサルタントのKamal Kar氏によると、極貧層の人々にとって支援団体から提供されたトイレは最も高価な所有物となるため、信仰の対象を入れる容器にしたり、まきを乾燥・収納する場所にしてしまうのだという。

 国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)の水・環境・衛生セクション代表のClarissa Brocklehurst氏がAFPに語ったところによると、長年の習慣が有害だと理解させることが重要だという。

■恥かしいと思わせることでトイレ使用に導く

 最近では、恥ずかしい思いをさせるのが、トイレでの排便を付けるための最善策であることが分かっている。

 例えばユニセフは、人口の48%(約6億6500万人)が現在も野外で排便しているとされるインドで、「恥」を活用した取り組みを行っている。その地域社会の人々に、どれほど糞便(ふんべん)で汚染されているか分かっているのかと問いかけるのだ。また、糞便された場所を示す地図を作り、地域中に糞便が散らばっていることを示す。そして、完全に汚染された環境に住むことが、どれほど気持ち悪いかを理解させるのだという。

「恥」の意識は原動力となり、地域社会の人々は生活を管理し、うまくいくよう独自の解決策を考え出すようになる。単なるおとし便所であっても、一度トイレを使い出すと、野外で排便しなくなるという。

 このような地域社会を基本単位としたプロジェクトは、数年前にバングラデシュで始められ、大きな成果を挙げている。現在ではアジア、アフリカ、中南米の28か国で実施されているという。

■補助金をなくすことも有効

 開発コンサルタントのKar氏は、このプロジェクトを成功させるカギの1つは、補助金をなくすことだと強調する。貧困層の家庭では、下痢などの病気にお金を使っても、補助金を期待してトイレの設置にはお金を出さない。しかし、この補助金をなくすことで変化が現れたという。

「すべての人間に自尊心があるというのが前提だ。人々が自分の置かれた状況を理解できるよう手助けする。その状況に気がつけば、お互いに糞便を食べ合うようなことは誰もしなくなる」とKar氏は述べている。(c)AFP/Pia Ohlin