【8月14日 AFP】肥満している人でも健康で、心臓疾患を生じやすいことはないという驚くような研究結果が、内科分野の米専門誌「アーカイブス オブ インターナル メディシン(Archives of Internal Medicine)」に掲載された。

 さらに別の研究では、やせているからといって何もせずに、高血圧やコレステロール、糖尿病といった心臓関連の病気から守られるわけではないことも示されている。
 
 肥満に関する報告をしたのは、Norbert Stefan氏率いるドイツ・テュービンゲン(University of Tubingen)大学のチーム。平均45歳の314人を対象に内臓の周囲の脂肪と皮下脂肪について調査した。

 対象となった肥満グループは、インスリン抵抗性のある人とない人で2グループに分けられた。インスリン抵抗性は糖尿病の発症前にみられる現象で、部分的な糖尿病の症状があったり、完全な糖尿病に進行する恐れがある状態だ。

 結果では、肥満でインスリン抵抗性がある人たちほど、筋肉および肝臓内の脂肪が多かった。また肥満でインスリン抵抗性のない人たちより頚(けい)動脈壁も厚かった。動脈の内側が狭くなることは心臓病の危険因子で、頚動脈壁が厚くなるのはその兆候だ。

 加えて、インスリン抵抗性のない肥満の人は、通常体重のグループと比べ、動脈壁の厚さに違いはみられなった。チームは「代謝的に良性の肥満というものの存在が証明された。そうした場合は、インスリン抵抗性が生じたりアテローム性動脈硬化にならずにすむ可能性がある」と結論付けた。

 一方、米ニューヨークにあるアルバート・アインシュタイン医科大学(Albert Einstein College of Medicine)のレイチェル・ワイルドマン(Rachel Wildman)は、1999年から2004年にかけて5440人を対象に、高血圧や中性脂肪の増加、いわゆる善玉コレステロールの減少など、心臓に影響を及ぼす代謝異常と体重の関係を調査した。

 この研究でも、肥満の中には代謝的に健康なものもあることが明らかになった。

 同研究チームは「肥満した人でも代謝異常のみられない人は、若年層、黒人、身体をよく動かす人、ウエストの細い人に多かった」と報告した。一方、体重が正常でも健康リスクの高い人は高齢になるほど増え、運動不足なほど、また平均よりもウエストの太い人ほど多かった。

 この報告によると、20歳以上の米国人では、正常体重の人の約23%に代謝異常がある一方で、太り過ぎの成人の51%および肥満成人の32%が「代謝的に健康」だとされている。(c)AFP