【6月4日 AFP】ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(London School of Hygiene and Tropical Medicine)は、研究所の実験でマラリア原虫の性的発育を阻止することに成功したと発表した。マラリアのまん延を食い止める予防薬の開発に期待がかかる。

 蚊(か)は、マラリア感染者の血を吸うときに、熱帯熱マラリア原虫の配偶子、つまり生殖細胞も吸い上げる。この生殖細胞は蚊の体内で性周期を繰り返して増殖し、蚊がマラリアに感染していない人の血を吸う際に、その唾液から体内に送り込まれる。

 生殖細胞そのものはマラリアを発症させないが、肝臓にとりついたあとで原虫を増殖させる。

 デビッド・ベイカー(David Baker)氏率いる同医学校のチームは、原虫の性周期を決定づける酵素を特定し、この酵素の作用を無効にする方法を開発した。無効にすることで原虫の性成熟を抑制できるという。

 ベイカー氏は、今回の実験の成果がマラリア予防薬の開発に役立つとみており、マラリア治療薬の開発も夢ではないと語っている。

 実験の詳細は、米オンライン科学誌プロス・バイオロジー(PLoS Biology)に掲載されている。

 世界のマラリア感染者は毎年5億人、マラリアによる死者は毎年100万人以上にのぼる。感染者の90%はサハラ以南のアフリカに住み、その大半は幼児か子どもだ。

 30秒ごとに1人、1日あたり3000人の子どもがマラリアで命を落としている。マラリア汚染国では、マラリアが年間経済成長率を1%以上下げているとの試算もある。(c)AFP