【AFP】(写真追加)成功している株式トレーダーの大半は男性ホルモン「テストステロン」の値が高く、これによって自信や活力がもたらされている。このような研究が14日のAnnals of the National Academy of Sciencesに発表された。

 研究を行ったのは、英ケンブリッジ大学(Cambridge University)のジョン・コーツ(John Coates)博士率いる研究チーム。テストステロンが、株式市場で働く人の実績を高める素質の1つ、冒険心を高めることも分かったという。

 チームのケンブリッジ大学脳修復センター(Cambridge Center for Brain Repair)のジョー・ハーバート(Joe Herbert)教授は「株式トレーダーは膨大なプレッシャーのもとで働いており、下さなければならない迅速な決断の結果が、トレーダー自身や市場全体に甚大な影響をもたらす」と指摘する。

 また、テストステロンをきっかけにもたらされた成功はさらなるテストステロンの分泌を促し、次の成功につながるという。

 例えば、男性アスリートのテストステロン値は競技前に上がるが、競技に勝ったアスリートのテストステロン値はさらに上がり、逆に負けた側の値は下がるという。

 これは「勝者の効果」と呼ばれ、正のフィードバック・ループの中で自信と冒険心を増し、勝利の機会を高める現象だ。

 研究は「ホルモンは、ストレスが高く、競争が激しい株式の世界で各トレーダーがどれだけの実績を上げているかを決定するのに重要かもしれない。さらに詳細な研究を進めている」としている。

■テストステロンが多すぎるのも問題

 研究では、シティ・オブ・ロンドン(City of London)で働く17人の男性株式トレーダーを対象に、8営業日連続で調査を行った。取引の大半が行われる前後の午前11時と午後4時に唾液のサンプルを採取し、その日の利益と損失を記録した。

 その結果、通常以上の利益を上げた日にはテストステロン値が大幅に高いことが分かった。逆に、テストステロン値の上昇により、トレーダーが道理を失った選択をし、損失をもたらすこともあるという。

 テストステロン値が上がり続ける、または慢性的に高いと、トレーダーは常にリスクをとるようになり、利益を徐々に損なうことになると研究は指摘する。

 これまでの複数の研究でも、衝動的に分泌されたテストステロンによって、興奮を求めたり、有害なリスクをとろうとする傾向が指摘されている。

 トレーダーとしての経験を持つコーツ博士は「テストステロン値が心理的限界に達すると、冒険心が中毒症状になる可能性がある」とし、「今のような経済状況下では、投資家の理性だけでなく、心理まで考慮しなければならない」と指摘する。(c)AFP/Jean-Louis Santini