【4月14日 AFP】米マサチューセッツ州(Massachusetts) のボストン小児病院(Children’s Hospital Boston)の研究チームは、鉄欠乏症の原因となる遺伝子を特定したと13日の英科学誌「ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)」に発表した。鉄欠乏性貧血の治療への寄与が期待される。

 鉄欠乏症は数ある栄養欠乏症の中でも最も一般的で、貧血の主要因でもある。世界保健機関(World Health OrganisationWHO)によると、世界人口の約3人に1人が鉄欠乏症を患っており、開発途上国では妊婦の2人に1人、未就学児の約40%が貧血症で、妊婦の死亡の20%が貧血によるものだという。

 貧血症は、血液中の赤血球あるいは酸素を運ぶヘモグロビンが著しく不足した状態をいう。

 研究チームは、経口サプリメントを飲んでも症状が改善しない、極めてまれな「経口鉄剤不応性・鉄欠乏性貧血(IRIDA)」に焦点をしぼり、慢性IRIDA患者が2人以上発生した5つの(近親者を含む)拡大家族について遺伝子コードを分析した。すると、5家族すべてで、TMPRSS6と呼ばれる遺伝子にさまざまな変異が認められたという。
 
 患者の両親が鉄欠乏性を患っていないことから、病変が劣性突然変異であることもわかった。
 
 発症メカニズムは依然として不明だが、TMPRSS6の欠乏により、鉄分の腸吸収をさまたげるホルモン「ヘプシディン」が大量生成されることがわかっている。ヘプシディンは通常、鉄の過剰吸収を防止する役割を担っているが、IRIDA患者の場合は鉄が不足しているにもかかわらずヘプシディンが大量生成され、これが鉄吸収にブレーキをかけると考えられる。

 鉄欠乏性貧血とTMPRSS6の関連性が明らかになったことで、新たな治療法開発の道が開かれることが期待される。(c)AFP