【4月4日 AFP】世界保健機関(World Health OrganizationWHO)は4日、世界10か国のドメスティックバイオレンス(DV)被害に関する調査結果を発表した。被害者の女性は、パートナーの男性に振るわれた暴力によって外傷が完治した後も長期間にわたりさまざまな形で苦しんでいることが明らかになった。

 今回の調査は、発展途上国でのドメスティックバイオレンスの実態に初めて踏み込んだ分析を行ったもの。調査が実施されたのは、都市や農村部など15地域。うち8地域では、DV被害に遭った女性のうち7人に1人が、パートナーによって今までに5回以上にわたって深刻な傷を負わされたと述べた。

 WHOの調査によると、暴力や性的虐待は流産や中絶、消化器系疾患や婦人科疾患、そしてさまざまな種類の慢性の痛みを引き起こしている。

 DVの被害は肉体的な負傷に限らない。報告によるとDVによって、うつ病や不安神経症、さまざまな恐怖症、薬物乱用などが引き起こされ、実際の暴力が中止されてからも長い期間にわたって被害者に影響を及ぼしている。

 また、肉体的、性的な暴力を受けた女性は、一般の女性と比べて3倍以上の頻度で自殺を考え、4倍以上の頻度で実際に自殺を試みている。

 従来のDV研究は、一国内を対象範囲としたものが多く、また欧州や北米に関するものがほとんどだった。今回のWHOの調査は、DVの問題が中東や東アジアなど特定の地域において深刻であることを示しており、従来の調査結果を裏付けるものとなった。

 調査対象女性2万4000人のうち、男性の暴力によって肉体的な負傷を受けたことがある女性は、エチオピアの農村部に暮らす女性の19%からペルーの農村部に暮らす女性の55%と地域によって大きな開きがあった。

 今回の調査で暴力の被害が少なかった地域は、バングラデシュ農村部の24.8%、同都市部の26.7%、日本都市部の26.6%などだった。一方、タイやブラジルの都市と農村部では多くのDV被害が報告された。

 調査結果はWHOのClaudia Garcia-Moreno氏がまとめ、4日の英医学誌「The Lancet」に掲載された。(c)AFP