【4月3日 AFP】肺がん発症リスクを高めるゲノム(全遺伝情報)の微細な変異を特定した3つの研究が、2日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 3研究はどれも同じ変異体を指摘している。一方で、全体の50%が持つとされるこの変異体が、肺がん発症リスク自体を高めるものなのか、それとも喫煙者の発症リスクのみを高めるのかについては見解が分かれている。また、この変異体が単に喫煙者の常習性を強めるものなのか、それとも肺がんの原因となる化学反応を引き起こすのかについても、異なる結論付けをしている。

 英国と米テキサス(Texas)州で3800人(うち半数はガン患者)を対象にした英米の研究チームによると、2種類の危険な遺伝子変異体の複製を1つ持つ、過去または現在の喫煙者では、肺がん発症リスクが38%高まるという。さらに、複製が2つある場合には、発症リスクは80%高まった。

 これらの遺伝子変異体を持つ確率は、喫煙者、非喫煙者ともに50%だが、肺がん発症リスクが高まるのは喫煙経験がある人の場合だけだったという。さらにこの研究では、これらの変異体がニコチン中毒症状を引き起こすのではなく、喫煙から直接作用を受け、がんの発生を促すと結論付けている。

 一方、国内1万人を対象にしたアイスランドの研究チームも、同じ変異体が肺がんリスクを高める原因だと指摘したが、ライトスモーカーや非喫煙者よりヘビースモーカーで多く発症がみられるため肺がんに至るまでの理由については英米チームとは逆に、変異体によってニコチン中毒症状が強まる結果、喫煙行為が強化され発症リスクが高まると結論付けている。

 3番目のフランスの研究チームは、全肺がんの14%にこの変異体が関与しているとして2研究の指摘を支持しつつ、しかし肺がん発症リスクは喫煙の有無に関係なく統計的に同程度だとしている。(c)AFP