【3月5日 AFP】高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスはアジアに「根深く定着」しており、ヒトの間で大流行する恐れが依然残っていると、世界保健機関(WHO)の専門家が5日、警告した。

 アジア各国では鳥インフルエンザ発生に対する備えが以前よりも整い、ワクチン備蓄も進んでいるが、WHO太平洋地域事務局の葛西健(Takeshi Kasai)感染症対策官は、同ウイルスによる死者や感染は増加していると指摘する。

 鳥インフルエンザに対するフィリピンの対応態勢を試験した訓練の中で、葛西氏は報道陣に対し、ウイルスはアジア地域に堅固に定着していると語った。またウイルスは常に変異を続けているため、大流行の危険性は根強く残っているという。

 専門家らが懸念するのは、通常は鳥からヒトへの直接感染しかしないウイルスが、ヒト同士の間で容易に感染する形に変異し、世界規模の大流行を引き起こすことだ。

 WHOによると、ヒトへの感染が初めて確認された2003年以来、H5N1による死者は世界で200人以上に上っている。最多の死者を出しているのはインドネシアで、今年に入りすでに11人が亡くなっている。アジア地域で鳥、人間のどちらの感染もこれまでに確認されていない国はブルネイ、シンガポール、フィリピンだけだ。

 葛西氏は鳥インフルエンザの恐れのある症例について、中国政府の報告がより透明性を増しているとして「中国は現在非常にオープンに、積極的に情報を共有している」と評価した。

 中国は数年前、重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory SyndromeSARS)が流行した際に関連情報の提供を差し控え、厳しく批判されていた。(c)AFP