【1月22日 AFP】筋ジストロフィーのマウスに胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を移植し、症状の改善に成功したとする研究結果を20日、米テキサス大学の研究チームが発表した。

 ES細胞の移植で筋ジストロフィーにかかったマウスの筋肉が回復傾向を示したのは初めてだという。

 研究を率いた同大学の分子生物学者Rita Perlingeiro氏は「最終的にはES細胞治療のヒトへの応用を視野に入れている。ES細胞を筋肉に移植することは可能で、それらの細胞は筋肉を再生させる」とする一方で、ヒトへの応用は何年も先になるとの見方を示した。

 筋ジストロフィーは主に筋肉に影響を与える、十数種類の遺伝性・変性疾患の総称。男性を中心に発生するこの病気は、筋肉が正常な状態で生存するために不可欠なタンパク質「ジストロフィン」の欠乏によって発症する。

 幼少期に発症する最も一般的な「デュシェンヌ型」は、3歳から4歳ごろに発症し、患者が30代まで生きられることは少ない。

 研究では、デュシェンヌ型を患うマウスに直接注射したES細胞が筋細胞になったという。

「問題はES細胞は何にでも分化することだ。必要なタイプの細胞に分化したものだけ取り出すのが重要だ」とPerlingeiro氏は指摘する。

 これを実行するために、研究チームはES細胞の分化の初期段階、すなわちES細胞が血液、骨、筋肉など体の特定の組織に分化する前の段階で活発な遺伝子「Pax3」を利用した。

 実験の最初の段階では筋細胞をシャーレで培養してマウスに注射したが、一部の分化していない細胞ががんを引き起こしたという。

 そこで、不要な細胞を取り除いた筋細胞を筋ジストロフィーを発症したマウスの後肢に注射したところ、細胞は筋肉の奥深くまで浸透して順調に成長・再生し、3か月経ってもがんは発生しなかったという。(c)AFP