【1月18日 AFP】15世紀末から欧州で大流行した梅毒は、米大陸を発見した探検家クリストファー・コロンブス(Christopher Columbus)によって持ち込まれた-18世紀の哲学者ボルテール(Voltaire)が著書『カンディード(Candide)』に記したこの説を裏付ける内容の研究が15日、米無料電子ジャーナル「PLoS Neglected Tropical Diseases」に発表された。

 梅毒は1495年、イタリア・ナポリ(Naples)に上陸したフランス軍の傭兵の間で初めて確認され、その後、欧米全土に広まった。医学史専門家の中には、この傭兵らはコロンブスの船の乗組員で、米大陸を探す大航海中に先住民の女性から梅毒に感染し、1493年に欧州に戻って感染源となったとの説を唱えるものもあった。これまでこの説の信憑性は低いとされ、逆に、梅毒は欧州起源であり、コロンブスの船の乗組員によって米大陸に持ち込まれたとする説もある。

 米エモリー大学(Emory University)のクリスティン・ハーパー(Kristin Harper)氏らによる系統学に基づいた新たな研究は、ボルテールの「梅毒コロンブス起源説」を裏付ける内容だ。

 研究では、梅毒などの伝染病を引き起こす細菌「トレポネーマ」の異系統を世界中の26か所で採取、比較した。その結果、梅毒はトレポネーマから進化した最も新しい伝染病であることが判明した。遺伝学的には、梅毒は南米だけに分布する熱帯風土病「フランベシア」に近い病気だという。フランベシアは梅毒と同様、皮膚、骨、関節に影響を与えるが、梅毒ほど症状はひどくなく、性交渉による感染はない。

 ハーパー氏らの仮説は、「コロンブスの船の乗組員がフランベシアに感染。細菌は航海するうちに徐々に欧州の涼しく乾燥した気候に適応、後に梅毒を引き起こす病原菌に変化し、以来安定した状態にある」というものだ。研究ではこの仮説の裏付けとして、コロンブス以前の欧州と北アフリカで骨格損傷を患った人間の遺体は見つかっていないと指摘している。(c)AFP