【11月21日 AFP】樹皮のような巨大イボが体中に生えていることから「ツリーマン(樹木男)」と呼ばれるインドネシアの男性が治療のため渡米できるように、米国の医師が働きかけている。しかし日刊紙ワルタ・コタ(Warta Kota)は20日、インドネシア保健省は男性の出国を認めない方針だと報じた。

 この男性、Dedeさん(32)は、腕全体が樹木のようないぼで覆われ、木の根のようなものが長く突き出ているため、「見せ物」として各地を巡業する以外は働くことができない。その様子は今月、米国のドキュメンタリー専門テレビ「ディスカバリー・チャンネル(Discovery Channel)」で紹介された。

 番組の中でDedeさんを診察した米メリーランド大学(University of Maryland)皮膚科のアンソニー・ガスパリ(Anthony Gaspari)医師によると、皮膚が樹木のような状態になっているのは、いぼを発生させる乳頭腫ウイルスと遺伝性疾患によるもので、免疫力が弱いためウイルスに対抗できないのが原因だという。

 しかしワルタ・コタ紙は、インドネシア保健省報道官の話として「(米国の医師が)Dedeさんを米国に連れて行くことは許可しない方針だ」と伝えた。報道官はさらに「Dedeさんのような小さな村の住人は、連れ出されることを好まないものだ。特に血液を採取されるならなおさらだ。村の住人は普通、簡単には外国人に採血させない」と述べている。

 ガスパリ医師はAFPの取材に対し、報道されたような保健省の決定は残念だとしながらも、治療を断念するつもりはないと話した。DedeさんへのビタミンA投与を続けるため、現在米国の製薬会社と交渉中だといい、これによって免疫力が強まり、いぼの生成が食い止められることに期待をかけている。

 「まず薬をインドネシアに送って地元の医師から投与してもらう計画を立てている。それでうまくいかなければ、米国に来てもらうしかない」とガスパリ医師。

 それ以外の選択肢として考えられる化学療法などの治療はリスクが高く、インドネシア国外で経過をじっくり見る必要があるという。

 遺伝子診断のためには採血の必要があるが、そのためには米国に連れて来なければならないとガスパリ医師は言い、「インドネシアの大学でも診断は可能かもしれないが、ノウハウがあるかどうかは分からない」と話した。(c)AFP