【10月3日 AFP】鳥インフルエンザの大量発生を阻止する切り札として期待されている抗インフルエンザ薬のタミフル(Tamiflu)が、逆にウイルスの耐性を強めてしまう可能性があるという研究結果を、スウェーデンの研究チームが発表した。

 タミフルは、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)ウイルスのヒトへの感染拡大を防ぐ目的で現在、各国が備蓄を進めている。ところが下水処理される過程でも分解されずに残るため、自然界に存在する鳥インフルエンザウイルスが突然変異を起こし、耐性を獲得してしまう危険があるという。

 この研究結果は3日、米研究者グループ「Public Library of SciencePLoS」が運営する電子ジャーナル「PLoS One」に掲載され、特に問題をはらむ国として日本を挙げている。

■分解されずに放出

 タミフルの正式薬品名は「リン酸オセルタミビル(oseltamivir)」。ウイルスを完全に撃退することはできないが、インフルエンザの症状を緩和することはできる。体力が弱っている高齢者などに投与し、感染期間を短縮して看病の負担を軽くするなどの効果が期待されている。

 スウェーデンのウメア大学(Umea University)のJerker Fick氏の研究チームは、普通の下水、濾過(ろか)して化学処理した下水、微生物を使って処理する「活性スラッジ」の下水の3種類で、タミフルの分子が分解されるかどうかを調べた。その結果、いずれの下水でもタミフルの有効成分が残ることが判明。これはタミフルがそのまま排水とともに自然界に放出されてしまうことを意味する。

 タミフルが大量に処方された場合、自然界で濃度が高まり、結果的にH5N1ウイルスに耐性を与えてしまう可能性がある。鳥インフルエンザウイルスは下水口近くでエサを取るマガモのような水鳥が感染することが多く、ヒトのインフルエンザウイルスと結合すれば、タミフルが効かない新種のウイルスが作り出されるかもしれない。

■日本はタミフル耐性患者が多い

 その危険が高いのが日本だという。スイスの製薬会社ロシュ(Roche)の統計によると、2004~2005年のインフルエンザの最盛期に、日本では1600万人が感染し、うち600万人がタミフルを投与された。その結果、日本の自然環境には大量のタミフルが放出されたことになる。

 実際、「日本はタミフルに耐性をもつ患者の増加の割合が高い」と論文は指摘。2004年に英医学雑誌「ランセット(Lancet)」に掲載された研究報告によれば、日本で感染した少人数の児童を調べたところ、18%が突然変異ウイルスに感染しており、このウイルスのタミフルへの耐性は、普通の場合に比べ300~10万倍高かったという。(c)AFP