【8月23日 AFP】 世界保健機関(World Health OrganisationWHO)は23日に発表した2007年度の『世界保健報告』の中で、伝染病が過去にない早い速度で拡大しつつあり、健康への脅威に立ち向かうためには地球規模の緊密な協力が必要だと警告した。

■国際的な協力が必要

 「より安全な未来(A Safer Future)」 と題された今年度の報告書は、疫病や食品を媒介とする疾患、環境的事故や原子力事故・核攻撃、工業汚染などによる脅威について警告を発している。また地球温暖化により「世界のいくつか国では数百万人の命が危険にさらされる」と指摘した。

 世界の人々の健康を守るためには、医学的ノウハウや医療技術、医薬品などを経済先進国が独占せず、貧困国と共有することが最も重要な鍵となるとしている。

■毎年新しい疾病が出現、従来の疾病も以前衰えず

 同報告書によると、1970年以降、毎年1種類以上の新たな疾病が確認されており、過去に例をみない確認率だという。

 一方、数百年以上にわたり人間の健康を脅かしているインフルエンザやマラリア、結核なども、ウイルスの変異や抗生物質に対する耐性の形成、不十分な保険制度などを原因として依然、勢いが衰えていない。

 マーガレット・チャン(Margaret Chan)WTO事務局長は「今日、これらの脅威に対する脆弱(ぜいじゃく)性は世界共通なため、安全を確保するには国際的に団結した取り組みが求められる」と声明を発表した。

■感染のスピードが加速、保険制度の違いも大きな問題

 同報告書が特に指摘するのは、過去半世紀で飛行機による人の移動や貿易が容易となったことに伴い、健康に対する脅威ももはや1つの国の中で収まるものではなく、早い速度で世界中に拡大する恐れが高まった点だ。
 
 また各国の保険制度については国によって深刻な開きがあるなど、貧困や資金不足のために、世界全体のセーフティーネットが危険にさらされているともいう。

 医療は疾病の治療や予防に不可欠なだけではなく、伝染病や新たな疾患の発生から、生物兵器攻撃による被害、環境衛生問題まで新たな脅威の特定にも必要であるとしている。

 チャン事務局長は「エイズ(HIV/AIDS)やエボラ熱、重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome、SARS)のような疾病が発見されることはない、と想定することはあまりに単純で楽観的すぎる」と警鐘を鳴らした。(c)AFP