【8月14日 AFP】米国の研究チームが12日、西ナイル熱ウイルスの悪性度を大幅に高めている変異遺伝子を突き止め、英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表した。米国ではこの夏、西ナイル熱が流行する恐れがあるとして衛生当局が警戒を呼び掛けている。

 西ナイル熱は鳥類によって拡散し、蚊を介してヒトにうつる感染症。ヒトに感染するのは大部分が良性のウイルスで症状も軽いが、重症になるとけいれんや高熱、昏睡状態、脳炎などを引き起こし、死に至ることもある。

 ネイチャー誌に研究成果を掲載したのは、カリフォルニア大学デービス校(University of California at Davis)のAaron Brault氏らの研究チーム。今回見つかった悪性ウイルスを、特に西ナイル熱に弱い米国のカラスに感染させた実験では、致死率が従来の31%から94%にまで跳ね上がった。

 Brault氏は、変異遺伝子のせいでウイルスの耐性が強まって増殖能力が高まり、環境変化に適応しやすくなっていると解説。ヒトの健康にどのような影響を及ぼすかは予測不可能だという。

 同氏によれば、西ナイルウイルスの感染は南米にも広がり、1日20キロから30キロのペースで南進、最近の報告ではアルゼンチンにまで到達したという。西ナイルウイルスは、感染速度を見る限り「ウイルスとしての感染力は過去最悪」だという。

 米国では2006年に4200人以上が西ナイルウイルスに感染し、177人が死亡した。米疾病対策センター(US Centers for Disease Control)によると、米国内で今年これまでに報告された死者数はまだ十数人にとどまっているが、感染者数は前年の4倍に増えている。(c)AFP/Marlowe Hood