【5月30日 AFP】国営メディアによる5月1日の報道で、北京五輪をめぐる「タバコ戦争」で初の暴力事件の発生が明らかになった。

  事件が発生したのは、2008年北京五輪のメイン会場、国家体育場(National Stadium)の建設現場で休憩中に喫煙していた建設作業員らに対し、数十人の警備員が金属製のパイプで襲いかかったという。

■五輪に向け、立法で喫煙取り締まりを強化

 五輪事務局は現在、大会の開催に向けて競技会場での全面禁煙を計画しており、世界禁煙デー(World No Tobacco Day)に当たる31日には、会場での喫煙を厳しく制限する法律が公表される予定となっている。

 北京保健局(Beijing Health Bureau)広報部のZhang Jianshu氏は「われわれは、国際オリンピック委員会(International Olympic CommitteeIOC)などの組織と協議を行い、31日に公表される法案の最終調整を行ってきた」と語る。

■困難な喫煙コントロール、五輪で現状の打開を

 国家体育場での衝突は、国内で喫煙をコントロールすることの困難さを象徴する出来事となった。

 約4億人とも言われる国内の喫煙者は現在、大半の公共の場で自由に喫煙することができ、喫煙を制限する法律は恒常的に無視されている。

 中国の疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and PreventionCDC)で禁煙プログラムに従事しているYang Jie氏は「喫煙との戦いはまだ始まったばかり。全面禁煙の五輪開催により、われわれのメッセージが国民に伝わることを望む」と語る。

■規制は暴動の元

 3月に開催された全国人民代表大会(全人代)では、「禁煙運動家らが国家全体の安定を損なっている」との非難をきっかけに、タバコをめぐる「言葉の戦争」が勃発している。

 国営のタバコ会社幹部、Zhang Baozhen氏は「旧ソビエト連邦(Soviet Union)が崩壊した際、愛煙家らがタバコを入手できなくなったことが原因で暴動が発生した」と述べ、「喫煙を禁止すれば、国内でも同様の事態が発生しかねない」と指摘。国営メディアは、「喫煙による危険性も存在するが、規制による危険性も同様に存在する」と語る同氏のコメントを伝えた。(c)AFP