不治の病に苦しむ女性、「尊厳死」を求め法廷での闘い - 英国
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【ロンドン/英国 13日 AFP】安楽死が法的に認められていない英国で、医師による安楽死処置を求め、不治の病に苦しむ30歳の女性が法廷での闘いを始めている。
南西部ブリストル(Bristol)在住のケリー・テイラー(Kelly Taylor)さんは、心臓に先天的欠陥がある「アイゼンメンゲル症候群(Eisenmenger’s syndrome)」患者で、余命1年と宣告されている。
彼女は痛みと戦うため、主治医にモルヒネ投与量を増加させるよう求めている。つまり、昏睡状態に至るのに十分な量の投与を望んでいるのである。
その場合、ケリーさんの作成した「リビング・ウィル(尊厳死の権利を主張し、延命治療の中止を求める“生前遺書”)」が有効となる。彼女は栄養や水分の人工投与を行わないよう主治医に求めている。
しかし、モルヒネ投与量を増やすことは安楽死につながるとして主治医はこれを拒否、ケリーさんは訴訟を起こしていた。ケリーさんの弁護団は12日、ロンドン高等法院に出廷、第1回口頭弁論が行われた。審理は2月末に行われる予定。
英国では、安楽死が「自殺ほう助」にあたるとの考え方から禁止されている。しかし、弁護団は「非人間的あるいは屈辱的な措置」を禁じた欧州人権条約(European Convention on Human Rights)を引用、彼女が求める措置は拒否されるべきではないとの主張を展開した。
アイゼンメンゲル症候群の患者は通常、先天的に心臓内部に大きな「穴」があいた状態で生まれる。低酸素血液が肺を経由して内臓器官に流れ込むため肺動脈圧が上昇、それに伴い諸症状が進行する。また、ケリーさんは先天的な頸椎の奇形を伴うクリッペル・フェイル症候群(Klippel-fiel syndrome)も併発している。
ケリーさんは「裁判に踏み切ったのは、もう十分すぎるほど十分だと思うから。これ以上苦しみたくない」と語る。
「病状はもはや何とかやっていける状況ではないところまできている。私の身体はどんどん衰え、しまいには人間としての尊厳すらない状態になってしまうだろう。そんな状態になってまで生きることは避けたい」
また、裁判については「(自らの意思を尊重しない)主治医やホスピスの決定を不法とし、私を昏睡状態とすることを認める判決を期待している」と語っている。
「それから、私のリビング・ウィルを尊重し、安楽死も認めてほしい」。
10年来連れ添ってきたケリーさんの夫、リチャード(Richard Taylor)さんも、彼女の考えを理解しサポートしてきたという。
一方、不治の病に苦しむ患者に対して安楽死が合法化されているスイスへ行くという選択肢をケリーさんは考えていない。移動に耐えられるだけの体力も彼女には残されていないのだ。
論争の的となっているチューリヒの「ディグニタス(Dignitas)」の施設では、これまでに60人以上の英国人が安楽死のための手助けを受けている。
ケリーさんは「(同施設へ)行った人を見てきたし、彼らの愛した家族たちが帰国してから受ける苦難も見てきた。リチャードが取り調べを受けるなんて耐えられない」と語る。
「私は外国で死にたくはない。自分の家で生涯を終えたい」
「(「ディグニタス」の)施設へ行った人を尊敬する気持ちはあるけれど、それは本当に必要なことではない。(英国の)法の改正を望んでいる」。
英国では2005年、医師による末期患者の自殺ほう助を合法化する法案が議員により提出されたが、貴族院(上院)において100対148で否決された。政府の後押しがない状況で法案が成立する望みはほとんどない。
ブルネル大学(Brunel University)が2005年、医師を対象に匿名で行った調査によると、2004年の年間死亡者数の約0.5%にあたる約3000人に対し、非合法な「ほう助」が行われた。また19万2000人については、死期を早める可能性がある苦痛緩和の処置が取られたとされている。
写真はケリー・テイラーさん。(c)AFP/DIGNITY IN DYING/SUZI GRALA
南西部ブリストル(Bristol)在住のケリー・テイラー(Kelly Taylor)さんは、心臓に先天的欠陥がある「アイゼンメンゲル症候群(Eisenmenger’s syndrome)」患者で、余命1年と宣告されている。
彼女は痛みと戦うため、主治医にモルヒネ投与量を増加させるよう求めている。つまり、昏睡状態に至るのに十分な量の投与を望んでいるのである。
その場合、ケリーさんの作成した「リビング・ウィル(尊厳死の権利を主張し、延命治療の中止を求める“生前遺書”)」が有効となる。彼女は栄養や水分の人工投与を行わないよう主治医に求めている。
しかし、モルヒネ投与量を増やすことは安楽死につながるとして主治医はこれを拒否、ケリーさんは訴訟を起こしていた。ケリーさんの弁護団は12日、ロンドン高等法院に出廷、第1回口頭弁論が行われた。審理は2月末に行われる予定。
英国では、安楽死が「自殺ほう助」にあたるとの考え方から禁止されている。しかし、弁護団は「非人間的あるいは屈辱的な措置」を禁じた欧州人権条約(European Convention on Human Rights)を引用、彼女が求める措置は拒否されるべきではないとの主張を展開した。
アイゼンメンゲル症候群の患者は通常、先天的に心臓内部に大きな「穴」があいた状態で生まれる。低酸素血液が肺を経由して内臓器官に流れ込むため肺動脈圧が上昇、それに伴い諸症状が進行する。また、ケリーさんは先天的な頸椎の奇形を伴うクリッペル・フェイル症候群(Klippel-fiel syndrome)も併発している。
ケリーさんは「裁判に踏み切ったのは、もう十分すぎるほど十分だと思うから。これ以上苦しみたくない」と語る。
「病状はもはや何とかやっていける状況ではないところまできている。私の身体はどんどん衰え、しまいには人間としての尊厳すらない状態になってしまうだろう。そんな状態になってまで生きることは避けたい」
また、裁判については「(自らの意思を尊重しない)主治医やホスピスの決定を不法とし、私を昏睡状態とすることを認める判決を期待している」と語っている。
「それから、私のリビング・ウィルを尊重し、安楽死も認めてほしい」。
10年来連れ添ってきたケリーさんの夫、リチャード(Richard Taylor)さんも、彼女の考えを理解しサポートしてきたという。
一方、不治の病に苦しむ患者に対して安楽死が合法化されているスイスへ行くという選択肢をケリーさんは考えていない。移動に耐えられるだけの体力も彼女には残されていないのだ。
論争の的となっているチューリヒの「ディグニタス(Dignitas)」の施設では、これまでに60人以上の英国人が安楽死のための手助けを受けている。
ケリーさんは「(同施設へ)行った人を見てきたし、彼らの愛した家族たちが帰国してから受ける苦難も見てきた。リチャードが取り調べを受けるなんて耐えられない」と語る。
「私は外国で死にたくはない。自分の家で生涯を終えたい」
「(「ディグニタス」の)施設へ行った人を尊敬する気持ちはあるけれど、それは本当に必要なことではない。(英国の)法の改正を望んでいる」。
英国では2005年、医師による末期患者の自殺ほう助を合法化する法案が議員により提出されたが、貴族院(上院)において100対148で否決された。政府の後押しがない状況で法案が成立する望みはほとんどない。
ブルネル大学(Brunel University)が2005年、医師を対象に匿名で行った調査によると、2004年の年間死亡者数の約0.5%にあたる約3000人に対し、非合法な「ほう助」が行われた。また19万2000人については、死期を早める可能性がある苦痛緩和の処置が取られたとされている。
写真はケリー・テイラーさん。(c)AFP/DIGNITY IN DYING/SUZI GRALA