【5月20日 AFP】帝政ロシア最後の皇帝ニコライ2世(Nicholas II)は処刑前、監禁下の手慰みにプライベートな家族写真をアルバムにまとめていた――。ウラル地方ズラトウースト(Zlatoust)の歴史博物館が保管していたこのアルバムが、このほど露エカテリンブルク(Yekaterinburg)の博物館で公開された。

 アルバムに収められた210枚の写真の大半はこれまで未公開のスナップ写真で、ニコライ2世が皇帝としての威厳を感じさせないリラックスした姿で写っている。ニコライ2世自身が撮影したものも多い。保存状態も良いという。

 ニコライ2世は1917年にロシア革命勢力に退位させられた後、シベリア(Siberia)西部トボリスク(Tobolsk)の離宮に流され、家族ともども事実上の幽閉生活を送ることとなった。当初は離宮内では比較的快適に過ごすことができたが、同年10月にレーニン率いるボリシェビキ(Bolshevik、ソ連共産党の前身)が実権を握ると、皇帝一家の待遇は囚人扱いとなり、翌18年4月にエカテリンブルクに移送された後、侍従とともに地下室で銃殺された。

 アルバムは1920年代から、エカテリンブルクとは距離にして約300キロメートル離れたズラトウーストの歴史博物館で保管されていたという。同博物館のユーリー・オクントソフ(Yury Okuntsov)歴史課副主任はAFPの電話取材に、「どのような経緯で収蔵されることになったのかは記録がなく不明だが、1920年代末ごろには当博物館にあった」と説明した。皇帝一家の見張り役か、処刑に関わった人物が所持していたのではないかという。

 アルバムの表紙は金色の紋章飾りもモノグラムもないシンプルなもので、写真は撮影順ではなく、テーマごとにまとめて貼られている。各写真の裏には鉛筆書きで名前などが記されている。ニコライ2世の退位後に撮影された写真は1枚だけで、その他の撮影時期は1914~16年。トボリスクで幽閉されていた間に、ニコライ2世が暇つぶしにアルバムにまとめたものとみられる。

 ロマノフ(Romanov)王朝創設400周年を記念する「最後の皇帝」のアルバム公開は、ロシア国民に熱狂とともに迎えられており、露紙コムソモリスカヤ・プラウダ(Komsomolskaya Pravda)は各写真のシリーズ掲載を始めている。(c)AFP/Anna MALPAS、Olga ROTENBERG