【4月18日 AFP】2001年9月11日の米同時多発テロで世界貿易センター(World Trade Center)が倒壊したことにより、永遠に失われたのではと危惧されていた故ジョン・F・ケネディ(John F. KennedyJFK)大統領と家族の写真などを紹介する展示会「JFK」が12日、首都ワシントンD.C.(Washington D.C.)にあるニュースとジャーナリズムの博物館、「ニュージアム(Newseum)」で開幕した。

 1963年にダラス(Dallas)で起きたケネディ大統領の暗殺事件は、20世紀の米国における決定的瞬間の1つであり、書籍や映画、テレビで繰り返し、事件に関する分析や調査が行われてきた。その暗殺事件から今年11月22日でちょうど50年になるのを機に、これまであまり人目に触れたことのない写真を公開し、米国を象徴する指導者に新たな光を当てることが「JFK」の狙いだという。

「JFK」は、3つの展示から構成されている。「Creating Camelot(キャメロットの創設)」と題された大統領一家の写真展は、舞台裏での家族の様子を捉えた私的な写真を紹介する。また、暗殺事件をテーマにした「Three Shots Were Fired(発射された三発の銃弾)」は、1963年11月22日の暗殺の瞬間について検証する内容だ。その他、大統領一家の魅力的な生活を詳細に物語る短編フィルム「A Thousand Days(1000日間)」も上映されている。

■ジャック・ロウ氏の「奇跡の」作品を紹介

 写真展の中で特に目を引くのが、米写真家ジャック・ロウ(Jacques Lowe)氏が撮影した、これまで公にされることのなかった作品の数々だ。1958年にケネディ大統領に出会った当時28歳だった同氏は、ケネディ家お抱えの写真家として活躍。ケネディ一家との間に他に例をみない親密な関係を築き、上院議員への再選を目指した1958年の選挙活動からホワイトハウス(White House)に上り詰めるまでのJFKの姿を撮り続けた。

 1958~1961年までの3年間に同氏が撮影した一家の写真は、およそ4万枚に上る。2001年に死去した同氏はこれらを非常に価値あるものだと考え、ニューヨーク(New York)の世界貿易センター(World Trade Center)ビルにあった銀行の金庫室に保管していた。そのため、同時多発テロでビルが倒壊、ツインタワーががれきと化したことで、保管されていたネガもすべて焼失してしまった。

 しかし、同氏の作品はその危機的状況の中を生き延びた。1500枚の「コンタクトシート(ベタ焼き)」が残されており、それらをスキャンしてペンの跡やホチキスの針などを取り除くことで、再生することができたのだ。今回の写真展では、その中から選ばれた70枚が展示されている。

■キャメロット伝説を「視覚化」

 ニュージアムのキュレーターは写真展について、「キャメロット伝説の誕生にロウ氏がどのように貢献したかを探る内容だ」と説明する。展示されているロウ氏の写真には、まだ赤ん坊だったキャロライン・ケネディ(Caroline Kennedy)さんが母親のジャクリーン・ケネディ(Jacqueline Kennedy)大統領夫人のパールのアクセサリーで遊ぶ有名な写真がある。しかし、その他の写真の大半は、これまで一切公開されていないものだ。

 ほぼ無名の政治家だった当時、選挙遊説の途中で立ち寄ったレストランで昼食を取るJFKの姿や、夫婦でボートに乗る様子、ホワイトハウスの秘書官らと遊ぶキャロラインさんの写真なども含まれている。

 キャロラインさんの弟で亡くなった「ジョン・ジョン」ことJFKジュニア(JFK Jr.)が机の下で遊ぶ写真はよく知られているが、キャロラインさんの幼少時の写真はそれほど出回っていないという。

■暗殺事件に絞った展示も

「JFK」を構成するもう1つの展示コーナーには、暗殺事件が起きた当日に撮影された写真ばかりが集められており、ジャーナリストの視点からそれらが紹介されているほか、事件に関連する品々が展示されている。

 UPI通信が事件発生から4分後にティッカーテープ機で伝えた第一報は、「凶弾によりケネディ大統領が負傷、恐らく重傷、致命傷の可能性も」だった。

 米国の名高いアンカーマン、ウォルター・クロンカイト(Walter Cronkite)氏が愛用していたノートやカメラ、パイプも紹介されているほか、暗殺を実行したとされるリー・ハーベイ・オズワルド(Lee Harvey Oswald)が事件発生から1時間20分後に逮捕された時に着用していた長袖のシャツと所持していた財布、犯行後にガソリンスタンドに捨てたとされるジャケットなども、初めて一般公開されている。(c)AFP/Fabienne Faur