【11月6日 AFP】日系米国人作家のジュリー・オーツカ(Julie Otsuka)さんが5日、20世紀初頭に見合い結婚で米カリフォルニア(California)州に渡った日本人女性たちを描いた小説『The Buddha in the Attic(屋根裏部屋のブッダ)』で、フランスの文学賞「フェミナ賞(Prix Femina)」の外国小説賞を受賞した。

 受賞作は第2次世界大戦(World War II)直前、長い黒髪に着物姿で草履を履いて米国で待つ日本人の夫たちのもとへ向かったフミコ、ハナコ、ミヨシの物語。

 オーツカさんはパリ(Paris)で開かれた授賞式で「この小説を通じて、こうした若い日本人女性たちと強制収容所の歴史を、欧州の人びとにも知ってもらいたい。強制収容所は諸外国ではほとんど知られておらず、米国内では今なおタブー視されている」と述べた。

 オーツカさんの第1作「天皇が神だったころ(When the Emperor was Divine)」は、大戦中に米各地に設けられた日本人強制収容所が題材。1962年にカリフォルニア州に生まれた日系人のオーツカさんの実体験と強く結びついた作品だ。

 オーツカさんの祖父は1941年、真珠湾攻撃の翌日に米連邦捜査局(FBI)に逮捕され、以降3年間、家族はユタ(Utah)州のトパーズ(Topaz)収容所に拘禁された。

 一方、第2作「The Buddha in the Attic」の冒頭は、3人の花嫁たちがまだ見ぬ夫の写真を手に、より良い生活への希望を抱いて戦前の日本から「巨人の国」米国へと出発する場面から始まる。

 だが米国に到着した彼女たちを迎えたのは、農場で働いたり都市で清掃作業に従事する、みすぼらしい夫たちの姿だった。茶道を始めさまざまな行儀作法を完璧に身につけてきた若い花嫁たちは、農作業や清掃に明け暮れる日常へと放り込まれる。

 オーツカさんはこの小説の中で、女性たちの望郷の念や、白人から向けられる視線を描いている。そして年月が過ぎ、米国人として生まれた彼女たちの子どもの視線も描かれている。子どもたちの1人はこう言う。「私は、ガチョウの卵から産まれたアヒルみたいな気がする」

 日本が米国に宣戦布告すると、女性たちは強制収容所に送られる。近隣住民はその様子を眺め、やがて少しずつ彼女たちの顔を忘れ、名前を忘れて行くのだった。(c)AFP