【10月15日 AFP】現在のチェコ出身の作家フランツ・カフカ(Franz Kafka)が友人マックス・ブロート(Max Brod)氏に託した遺稿は、イスラエルの国立図書館に寄贈されるべき――。40年以上にわたり個人の手元にあったコレクションをめぐり、イスラエル・テルアビブ(Tel Aviv)の裁判所がこのような判決を下した。

■プラハからパレスチナ、そしてドイツへ―ユダヤ系作家の遺稿の旅

 オーストリア・ハンガリー帝国(現チェコ)のプラハ(Prague)に生まれたカフカは1924年、40歳のときに友人のブロート氏に全ての原稿類を預け、自分の死後に焼却するよう指示した。だが、カフカ作品は20世紀で最も影響力のある文学の1つだと考えたブロート氏は、カフカの遺志を無視しドイツ語で出版した。

 1939年にブロート氏は英委任統治下のパレスチナへと逃れる。カフカの未発表作品などを含む同氏のコレクションは、1968年に死去する際に秘書のエステル・ホフェ(Esther Hoffe)氏に遺贈され、銀行に保管しつつ一部を売却するなどした。その後、コレクションは2007年にホフェ氏の娘2人の手に渡った。

 現在、遺稿の一部はドイツのマールバッハ(Marbach)にあるドイツ文学史料館(German Library Archive)が収蔵しており、さらなる遺稿収集に意欲を見せている。

■「ブロート氏が公共機関への譲渡を指示」と認定

 コレクションの所有権をめぐる裁判は2008年に始まった。国立エルサレム・ヘブライ大学(Hebrew University of Jerusalem)の所有権の主張に対し、ホフェ氏の娘たちは、ブロート氏のコレクションはホフェ氏への贈り物だったと反論していた。

 しかしこのほど裁判所は、ブロート氏がホフェ氏に向かってはっきりと、コレクションの目録を作成し「ヘブライ大学かテルアビブ市立図書館、あるいはイスラエル国内外の公共機関」に譲渡するよう指示していたと認定。「ブロート氏のコレクションなどのカフカの遺稿」をホフェ氏の娘たちへの贈り物とみなすことはできないとして、ヘブライ大の要求通りのコレクションを同大に引き渡すよう命じた。(c)AFP