【7月20日 AFP】日本食に武術、そして邦楽から漫画――およそ100年の歴史を持つブラジルの日系人コミュニティは、少数派ながらも日本文化を前面に打ち出しながら、その「ソフトパワー」で存在感を示している。そんな彼らが、自分たちのルーツを確かめることができるイベント「日本祭り(Festival do Japao)」が15日、サンパウロ(Sao Paulo)でフィナーレを迎えた。日系人のコミュニティーは、南米最大の国ブラジルで最も成功を収め、社会に溶け込んでいるとされる。

 ホンダ(Honda)やトヨタ自動車(Toyota Motor)、三菱自動車(Mitsubishi Motors)といった日系企業やブラジルの大手銀行ブラデスコ(Bradesco)が後援するイベントの来場者は、3日間で過去最高の19万人を記録した。15年前につつましく始まったこのイベントだが、今やパラグアイやアルゼンチン、ペルーなど近隣諸国の日系人が一堂に会する巨大フェスティバルに大変身した。

 主催するブラジル日本都道府県人会連合会(KENREN)、コーディネーターのヤマウチ・エリカさんは「47都道府県すべてを代表する日系人たちがいます。しかも来場者の半数は、日本文化を知りたいという日系人以外の人たちです」と語る。

■今年104歳の日系人コミュニティ

 実行委員会委員長の前田ネルソン氏によると、イベントの目玉は47都道府県の多様な食文化の紹介だ。しかし一番の目標は「日本文化の保存を越えて、日系人社会に限らず、ブラジル全体で各コミュニティをつなぐこと」だという。「今年は日本からブラジルに最初の移民が渡って104周年。私たち日系人も扉をオープンにして恩返しをしたい」
 
 ブラジル地理統計院(IBGE)によれば同国への最初の移民船、笠戸丸(Kasato Maru)が、日本人の農民781人を乗せてサントス(Santos)の港に到着したのは1908年。彼らは農園主や土地所有者として成功を収めた。日系人が運営する農業協同組合は今でも、サンパウロやリオデジャネイロ(Rio de Janeiro)の市場で売られる生鮮青果物の多くを供給している。

 日系ブラジル人の人口は現在、同国総人口の1%をわずかに下回る180万人だが、日系人の人口としては世界最大だ。。うち6割がサンパウロ州に住み、その他パラナ(Parana)州やマットグロッソ(Matto Grosso)州に集中している。

 日本の高度経済成長期には多くの日系人が祖先の地での出稼ぎに赴いた。しかし最近は日本経済の低迷とブラジル経済の台頭が重なり、2008年以降は約30万人が大挙して帰国したため、日系人の人口は増加し続けている。

 ブラジルの日系人については、高い教育を受け、社会によく適応した成功者だとみられており、政財界や学問の世界で高い地位に就いている者も多い。前田氏は「若い日系ブラジル人はよく適応しているが、多くが日本語を話せない。だからこそ食文化にとどまらず、日本の伝統に触れさせたいのです」と述べた。(c)AFP/Gerard Aziakou