【6月19日 AFP】オーストラリアで見つかったロックアート(岩石画)の破片の年代を測定したところ、2万8000年前という結果が出た。調査した専門家が18日、明らかにした。アボリジニのコミュニティは世界の先住民文化の中でも相当進んだ文化を持っていた可能性が浮上した。

 破片は、南クイーンズランド大学(University of Southern Queensland)の考古学チームが、アボリジニのために保護されている地域、同国北部のアーネムランド(Arnhem Land)にある巨大岩窟住居Narwala Gabarnmangで1年前に発見した。

 破片には木炭で絵が描かれていたことから、最近この木炭を放射性炭素年代測定したところ、世界で最も古い部類の芸術作品であることが分かった。

 破片を発見し、最初に調査した南クイーンズランド大学のブライス・バーカー(Bryce Barker)教授は「この破片が特徴的だったのは、絵が木炭で描かれていたことだ。このため絵の年代を直接知ることができた」と話し、この破片がロックアートの一部だとすれば、地球で最古の芸術作品のいくつかにアボリジニの人々が関わっていたことを示すことになると指摘した。

 破片が見つかったNarwala Gabarnmangは、天井や柱状の岩の表面がアボリジニのロックアートで覆われている。ここに行くにはヘリコプターを使うしかなく、奥地の町キャサリン(Katherine)から90分かかる。

 南クイーンズランド大の考古学チームが初めてNarwala Gabarnmangにやって来たのは5年前。チームを案内したのはアボリジニ伝統の暮らしを守るジャオイン(Jawoyn)の人々だった。彼らはアボリジニ芸術の保護を願っていたと同時に、その謎を解き明かしたいとも思っていた。

 バーカー教授は、破片は岩石画が描かれてからそれほど時間を経ずに天井から剥がれ落ち、土に埋もれたために保存されたとみている。元の岩石画にはやりを投げるなど動きのある人物が描かれていたとみられる。

 バーカー教授は「これまでに発掘したのはNarwala Gabarnmangのほんの一部に過ぎない。アボリジニの人たちがこの場所を使い始めたのは4万5000年前だったことを考えると、2万8000年前より古いものもきっとあるだろう」と期待をふくらませる。

 アボリジニのロックアートは広大なオーストラリアのあちこちに点在しているが、その多くはまだ調査記録が作られていない。(c)AFP