【2月22日 AFP】競売大手サザビーズ(Sothebys)は21日、ノルウェーの画家エドバルト・ムンク(Edvard Munch)の代表作「叫び」(The Scream)4点のうち1点を5月2日に米ニューヨーク(New York)で競売にかけると発表した。落札額は8000万ドル(約64億円)を超えると予想されている。

 競売にかけられる作品の所有者はノルウェーの実業家ペッター・オルセン(Petter Olsen)氏。同氏の父親はムンクの知人で、資金提供者でもあった。「叫び」4点のうち個人が所有しているのは今回競売にかけられる作品のみ。

 同作品は1895年に描かれたパステル画で、4点のうち唯一背景の2人のうち1人の人物が横を向いた構図になっている。ロンドン(London)のサザビーズで4月13日に展示された後、4月27日からはニューヨークで展示される予定だ。 

 オルセン氏は声明で、収益金はノルウェー南部ヴィドステン(Hvitsten)に所有する農場に新設予定の美術館やホテルの設立資金に充てたいとしている。

 ムンクは母国ノルウェーで1944年1月に80歳で他界した。今回競売にかけられる作品の額縁にムンク自身が記した詩には、「死人のように疲れている」とある。また、歩き続ける友人を前に「私は後ろで/『不安』にうち震えながら/―自然の悲痛な『叫び』を感じる」と、心情をつづっている。

 絶望する人物のイメージで有名なムンクの「叫び」は、世界で最もよく知られた名画の一つ。美術館に所蔵されていた「叫び」の他の作品は2度盗難被害を受け、その知名度はいっそう高まった。同国リレハンメル(Lillehammer)で冬季オリンピックが開催された1994年には、オスロ(Oslo)の国立美術館(National Gallery)に所蔵されていた作品が盗難にあったが、無傷のまま戻されている。

 2004年には、覆面の銃撃犯がオスロのムンク美術館(Munch Museum)に所蔵されていた1910年に描かれた「叫び」1点をムンクの他の作品と共に盗み出したが、2年後に美術館に戻った。(c)AFP/Sebastian Smith