【11月10日 AFP】米ニューヨーク(New York)で9日、競売大手サザビーズ(Sotheby)が開いたオークションで米抽象画家クリフォード・スティル(Clyfford Still)の絵画が6170万ドル(約47億9000万円)で落札された。

 労働組合らによる抗議デモのなかで行われたオークションに出品された作品は、「1949-A-No. 1」。当初の予想落札価格は2500万ドル(約19億4000万円)~3500万ドル(約27億1500万円)だった。落札価格の6170万ドルは、1980年に死去したスティルの作品では最高額で、これまでの最高額だった2130万ドル(約16億5350万円)の、ほぼ3倍の値がついた。サザビーは「1949-A-No. 1」を、「20世紀の米国人画家による最も偉大な作品の1つ」と紹介している。

 作品は5人の入札者で争われ、競売人のトビアス・マイヤー(Tobias Meyer)氏が「いいリズムだ。このまま突っ走りたいね」と競りをあおりながら、次々と値を上げるたびに、室内は興奮に包まれた。

「1949-A-No. 1」の落札直後、スティルの「1947-Y-No.2」も予想の2000万ドル(約15億5000万円)を上回る3140万ドル(約24億4000万円)で落札された。

 スティル作品の高落札価格により、この日、サザビーズが行った現代アート・オークションの売上げ総額は3億1580万ドル(約245億円)と、世界の金融不安をものともせず、大きな成功を収めた。

 オークション終了後、マイヤー氏は、この日の現代アート・オークションを2008年の金融危機以来で最も大きな成功だったと述べ、特にスティルの落札を「魔法のような時間だった」と評した。

■ オークション会場の外はデモ隊で騒然

 一方、ドラマは競売場の外でも進行していた。格差への抗議運動「オキュパイ・ウォールストリート(Occupy Wall Street、ウォール街を占拠せよ)」に参加する労働組合員らが、気勢を上げていたのだ。

 サザビー職員らの労組は、契約交渉の期間、会社側から出勤を禁じられたと主張している。

 これに対し、サザビー側は、誠意をもって交渉に臨み、賃上げを含む「非常に公正な条件」を提示したと、文書で回答している。

 デモ隊が取り巻くオークション会場を訪れた富裕層の人々は、サザビーの警備員に付き添われて会場内に入っていった。

 サザビーのビルの周囲は、デモ隊の叫び声や鳴り物の音に包まれたが、7階にある競売会場内に入れば、外の騒音はほとんど聞こえず、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)やダミアン・ハースト(Damien Hirst)など現代アートの巨匠らの作品のオークションが整然と行われた。(c)AFP/Sebastian Smith