【10月28日 AFP】仏美術評論家が27日、作者不詳の銀製の女性の裸像について、巨匠オーギュスト・ロダン(Auguste Rodin、1840-1917)の作品で、弟子で愛人でもあった彫刻家カミーユ・クローデル(Camille Claudel)をモデルに制作したものと分かったと発表した。

 高さ22.5センチの女性の裸像は、痛みを感じて立ち止まったようなポーズを取り、片手に持った布がひだを作りながら両足の間に垂れている。作者の署名は入っていない。

 この裸像に「傷ついた女(femme meurtrie)」との仮称を付けた19世紀を専門とする美術評論家、ジル・ペロー(Gilles Perrault)氏は記者会見で「全ての特徴がロダンらしさを表している」と述べ、証拠を提示した。

■のみの市で発見、表現手法に「ロダン様式」

 ロダン作品の公式記録やロダンとカミーユの書簡の中にこの作品は登場せず、パリ(Paris)のロダン美術館(Rodin Museum)はペロー氏の主張に強い疑問を呈している。

 しかしペロー氏は、約25年に及ぶ研究の結果、ロダンが作者だと「固く信じるようになった」と述べた。彫像には作者の署名も、型取りから仕上げまでを行った鋳造所の銘も入っていないが、制作年は1886年頃だろうという。ペロー氏は作品のテーマについて、カミーユとの苦しい恋、特にロダンとの間にできた子どもを何度も堕胎した事実だと思うと語った。

 この彫像が最初に公になったのは1980年代で、パリののみの市で古物商が見つけ、現在の所有者である個人収集家に売却した。この収集家が、破棄院(最高裁判所)の美術鑑定官を務め自ら彫刻家でもあるペロー氏に鑑定を依頼。ルーブル美術館やベルサイユ宮殿所蔵の美術品の修復作業を率いてもいるペロー氏は、鋳型の受取書まで探し出す緻密さで、ロダン美術館の資料や仏内外に存在するロダン作品を徹底的に調査し、ロダンとカミーユのスケッチや彫刻作品、技術などを比較した。

 特に注目したのが、指の隙間の取り方や、足の表現、布のひだなどで、全てロダン様式ともいえる特徴の典型が示されているとペロー氏は指摘している。また、彫像には型を取った際にできた顕微鏡で見える程度の痕跡が残っているが、これは作家シラノ・ド・ベルジュラック(Cyrano de Bergerac)を偲んでロダンが制作した作品に残された痕跡と似ているという。

 さらに、彫像の女性の極端な猫背について、ロダンとカミーユのモデルをよく務めていた女性の特徴と一致すると指摘。「体のひねり方や筋肉の張り具合も、情緒を表現する際のロダンの特徴的な手法だ」とペロー氏は語った。(c)AFP/Sandra Lacut