【10月19日 AFP】18日、世界的権威のある英文学賞ブッカー賞(Man Booker Prize)の2011年の受賞作に英作家ジュリアン・バーンズ(Julian Barnes)氏(65)の「The Sense of an Ending」が選ばれたと発表された。

 ブッカー賞は、英連邦及びアイルランド出身の作家による優れた小説に贈られるもので、バーンズ氏は賞金5万ポンド(約600万円)も手にした。
 
 1984年、1998年、2005年にそれぞれ「フロベールの鸚鵡(Flaubert's Parrot )」、「イングランド・イングランド(England, England)」、「Arthur and George」で最終候補に残りながらも受賞を逃してきたバーンズ氏は、ロンドン(London)で行われた授賞式に出席。「嬉しいのと同じくらい安心した」と語り、最終候補4度目でついに同賞を手にした心境を明かした。

 バーンズ氏は、キャロル・バーチ(Carol Birch)氏の「Jamrach's Menagerie」、A・D・ミラー(A.D. Miller)氏の「Snowdrops」を抜いて、ブックメーカー(賭け屋)の有力候補だった。

 最終候補にはそのほか、カナダの作家パトリック・ドゥイット(Patrick deWitt)氏の「The Sisters Brothers」、同じくカナダの作家エスィ・エドュージャン(Esi Edugyan)氏の「Half Blood Blues」、英作家スティーブン・ケルマン(Stephen Kelman)氏の「Pigeon English」がノミネートされていた。

 受賞作「The Sense of an Ending」は、人生の思い出を辿るうちに自分の記憶が不完全だと気付く一見普通の男を描いている。

■「読みやすさ」を重視した最終候補
 
 今年は最終候補6作が選考された段階で、明らかに大衆向けを意識していると批判する声が上がり、ブッカー賞に対抗する別の賞が創設されるなど一悶着があった。これについてバーンズ氏は、「審査員の見識に感謝している。彼らに対する非難などないと思う」と述べた。

 今年の審査委員長を務めた英情報局保安部(MI5)の元長官ステラ・リミントン(Stella Rimington)氏は「見事に書かれた本だと思った。21世紀の人類に語りかけるものだ」と語り、「読みやすい」作品を最終候補に並べたことへの謝罪などはしなかった。

 リミントン氏は逆に、出版界内部から上がった批判に対し、偽情報を使い混乱を企て二重スパイを使った絶頂期の旧ソ連国家保安委員会(KGB)のようだと非難。受賞作については、何度も読むことのできる作品だとして、バーンズ氏の文体をたたえた。

 最終候補で「読みやすさ」を重視したリミントン氏に異論を唱えた人びとは前週、「文学賞審議会(The Advisory Board of the Literature Prize)」なるものを立ち上げ、文学の基準となっているブッカー賞を打ち負かすと宣言。「英語で書かれ、英国で出版された優れた小説」に贈る「文学賞(Literature Prize)」を創設した。米国人の小説も候補に入るという。(c)AFP/James Pheby