【10月6日 AFP】(一部更新)スウェーデン・アカデミー(Swedish Academy)は6日、2011年のノーベル文学賞(Nobel Literature Prize)をスウェーデンの詩人トーマス・トランストロンメル(Tomas Transtroemer)氏(80)に授与すると発表した。

 スウェーデン・アカデミー(Swedish Academy)は、選考理由を「凝縮された半透明なイメージを通して、現実に対する新たな道程を示してくれた」と説明した。

 その詩は、想像と感情の世界に予測不能性を散りばめ、読む人の方向感覚を失わせると同時に新たな感覚を呼び覚ます。

 トランストロンメル氏は「神秘主義の巨匠」とも呼ばれる。作品はしばしば、ゆっくりとした時の流れの中で内なる自分と外の世界が乖離(かいり)していく、夢のような意識を提示する。

■「自分が大きな存在だと気付かせてくれる」

 1990年に脳卒中で倒れ、言葉が不自由になったトランストロンメル氏。6日の記者会見で、「とてもいい気持ち」と、受賞の喜びをにこやかに語った。ほかの質問に対しては、モニカ夫人が答えた。

 アマチュアのピアニストでもある。毎日、麻痺(まひ)のない左手でピアノを弾き、朝はクラシック音楽を聴いて過ごしている。スウェーデン・アカデミーから電話があった時も音楽を聴いていたという。

 スウェーデン・アカデミーの会員で事務局長も務めるペーテル・エングルンド(Peter Englund)氏は、スウェーデンのテレビに対し、トランストロンメル氏が1993年から毎年同賞にノミネートされてきたことを明らかにした。

 エングルンド氏はノーベル賞のウェブサイト「nobelprize.org」に次のようなコメントを発表した。

「彼は、われわれを見据え、われわれを創造しながら、死と歴史と記憶に関して描写する。人間はこの3つの大きな要素が出会う一種の監獄のようなものなので、彼の詩を読んだ後は、自分が決して小さな存在ではなく、大きな存在であると思えるようになる」

「彼の作品はすべて、ポケットサイズほどの大きさだ。したがってとても速く読めるが中身はとても濃密だ。彼は多く作品を書くタイプの作家ではない」(c)AFP/Pia Ohlin