【11月9日 AFP】イタリアで前週、世界遺産、ポンペイ(Pompeii)遺跡にある古代ローマの剣闘士たちの住居だった「剣闘士の家」が豪雨によって全壊した。考古学者たちは現状のままでは国内遺跡の多くが同様の運命をたどると警鐘を鳴らしている。

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 非政府組織「Our Italy(われわれのイタリア)」のアレッサンドラ・モットラ・モルフィーノ(Alessandra Mottola Molfino)代表は、フィレンツェ(Florence)のドゥオモ(大聖堂)やローマ(Rome)にある皇帝ネロ(Nero)の黄金宮殿、トスカーナ(Tuscany)地方ルッカ(Lucca)の城壁など、国内のあらゆる歴史的建造物がポンペイの「剣闘士の家」と同じ運命にさらされていると危ぐする。

 また、政府が歴史的建造物への影響を軽視して都市計画を進めた結果、近くに交通量の多い道路ができたボローニャ(Bologna)の斜塔は、昼夜を問わずに大型車両が走行する影響で無数の損傷が発生しているという。

 例外的にひび割れが見つかり次第、修復措置がとられているのはローマのサンピエトロ教会やミラノ(Milan)の大聖堂くらいだと、モルフィーノ代表は話す。

 歴史的建造物の保護をめぐっては、イタリア考古学協会が5月、天候による損傷の危機にさらされている国内遺跡の一覧を公表している。しかしイタリア政府は今後3年間で文化関連予算を2億8000万ユーロ(約314億円)削減する方針だ。文化省の予算だけでも年間5800万ユーロ(約65億円)が削減される。

 これに対し、非政府組織、イタリア環境基金(FAI)は、全壊した「剣闘士の家」の修復は臨時予算や特別法で一時的に対処するのではなく、文化関連予算の削減撤回を政府に求めている。(c)AFP/Ella Ide