【2月17日 AFP】古代エジプト王朝のツタンカーメン(Tutankhamun)王は、内反足を患い、つえをついて歩き、マラリアにかかって死亡したとする研究報告が16日、発表された。現代の遺伝子検査とコンピューター技術を駆使した研究によって、古代エジプトの謎が解き明かされた。

 エジプト考古最高評議会(Egyptian Supreme Council of Antiquities)のザヒ・ハワス(Zahi Hawass)事務局長率いるエジプト、イタリア、ドイツの研究者からなる研究チームは、DNA検査やCT(コンピューター断層撮影装置)スキャンを駆使して、ツタンカーメン王の家系や体つき、死因などを調べた。

 研究チームは、ツタンカーメン王を含むミイラ11体からDNAを取り出して分析。さらにはミイラ10体をCTスキャンにかけ、家系的なつながりを調べたほか、遺伝性疾患や感染性疾患の痕跡を探し、ツタンカーメン王の死因を特定した。

 ツタンカーメン(紀元前1333~1324年)は、9歳の若さで古代エジプト第18王朝のファラオの座に就いたが19歳で死去した。

■ツタンカーメン王は病弱だった

 報告書は、「これまでに多くの研究者たちが、戦車からの落下、馬などの動物に蹴られた、敗血症、大腿骨骨折に伴う脂肪塞栓症、後頭部殴打による殺害、毒殺などの仮説を立ててきた」と説明。

 しかし、遺伝子検査の結果、ツタンカーメンが、致死性のマラリアを引き起こすことの多い熱帯熱マラリア原虫(plasmodium falciparum)に感染していたことを示す痕跡が見つかったという。

 また、CTスキャンや遺伝子指紋法などを使ってツタンカーメンのミイラを調べたところ、ツタンカーメンが一族の多くがかかった複数の疾患を抱えていたことも明らかになった。疾患には、骨疾患や内反足などもみられたという。

 これらのことから研究者らは、ツタンカーメン王について、威厳のある王というこれまでの描写よりもむしろ、「若く虚弱で、骨壊死症のために歩くのに杖を必要とし、ときにフライバーグ病(第2ケーラー病)の痛みに苦しみ、右足は欠指症で、左足は内反足だった」と描写した。

 ツタンカーメン王が抱えたさまざまな疾患は、時間をかけて王の免疫システムを弱らせていったとみられる。報告書は、王が免疫不全の状態で、「おそらく落下により、突然足を骨折」したために命にかかわる状態となって、マラリアに感染し死亡したのだろうとの見解を示した。

■父親は「アクエンアテン」王

 また研究者らは、遺伝子指紋法によりY染色体の部分情報から、古代エジプトで宗教を改革しようとしたアクエンアテン(Akhenaten)王(紀元前1351~1334年)が、ツタンカーメンの父であると特定。母はアクエンアテン王の姉妹であるとした。

 また、ツタンカーメン王は娘2人の父親となるはずだったが、いずれも胎内で死亡していたことが分かった。

■女性的なルックスの証拠は無し

 一方で、3000年前の遺物では女性的な体形で描かれることの多いツタンカーメンとアクエンアテンだが、それを示す証拠はまったく見つからなかったという。

 報告書は、「古代エジプトの王は一族を理想的な姿で描くことが多い」と指摘し、「ツタンカーメンとアクエンアテンが実際にとても風変わりで女性的な体形をしていたとは考えにくい」と述べた。(c)AFP/Karin Zeitvogel