【6月8日 AFP】美術品収集家になるには大金が必要だと言ったのは、誰だったのか?

 パリ(Paris)で開催された現代美術見本市「アフォーダブル・アート・フェアー(Affordable Art FairsAAF、手が届くアートフェア)」に並んだ作品で、5000ユーロ(約69万円)以上の値札をつけているものはなかった。

「美術品を買うのに、大金持ちである必要はない」と語るのは、美術品を格安で販売するという考えのもと、10年前にAAFをスタートさせたスコッツマン・ウィル・ラムゼイ(Scotsman Will Ramsay)氏。この考え方が、今では世界に広まっている。

 1999年にロンドン(London)で始まったAAFは、現在、ニューヨーク(New York)、シドニー(Sydney)、アムステルダム(Amsterdam)などの都市10か所で行われている。ブリュッセル(Brussels)では今年初めて開催された。パリでは2回目の開催となり、80のギャラリーからさまざまなアートが出品された。2008年、AAFは2000万ユーロ(約27億円)以上を売り上げたという。

「価格に上限があると、人々は『これなら私にも買える』と思う」とラムゼイ氏は語る。

 同じくパリで行われた同様の見本市「アート・ショッピング(Art Shopping)」の創設者Corinne Menegaux氏によれば、人々は購入意欲はあるが購入方法を知らないという。

 ラムゼイ氏も、20代でアートギャラリーに足を踏み入れた際、同様の経験をした。店員が対応してくれなかったのだ。そこで、ラムゼイ氏は「アートに対する恐怖を少なくし、近づきやすく、親しみやすくするために」AAFを思い付いた。

 しかし、主に抽象的な現代美術を中心とする美術品は、新参者にはじれったいほど分かりにくい可能性がある。そこで、協議や講習が行われ、専門家が販売を指南することもある。

 パリのオークションハウス「Drouot Formation」で、専門家を養成する担当者Frederic Elkaim氏は、アート初心者は自分が良い投資を行っているのか、この芸術家は次のピカソになれるか、などを気にすると語る。

「我々は預言者ではないと言います。アートの購入は喜び、趣味、個人的な選択だが、有名な芸術家たちは皆、こういう見本市からスタートしているということを伝えます」

 Elkaim氏は同時に、作品の背景や、その芸術家がポップアート系なのか、ネオリアリズム系なのか、どんな本を読めば良いのかということは伝えるという。「我々は、最初の作品を手に入れる手伝いをするんです」

 ラムゼイ氏やギャラリーのオーナーらによれば、世界規模の金融危機はAAFの来場者数にはほとんど影響していないという。 

 ラムゼイ氏は語った。「アフォーダブル(手が届く)は、現代の流行語なんですよ」(c)AFP/Claire Rosemberg