【3月3日 AFP】フランス・パリ(Paris)で開かれた故イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)氏の所蔵品の競売で、中国人収集家が中国・清朝時代のネズミとウサギの頭部ブロンズ像を落札した問題で、サンローラン氏のパートナーのピエール・ベルジェ(Pierre Berge)氏は2日、背後に中国政府の落札妨害の意図があったとの見解を示した。

 2体のブロンズ像は、サンローラン氏とベルジェ氏が所蔵していたもので、前月に競売大手クリスティーズ(Christie's)によって競売にかけられた。中国政府は、これらの像は約150年前のアヘン戦争時に北京(Beijing)郊外にある清朝時代の遺構、円明園(Old Summer Palace)から英仏連合軍が略奪したものだとして無償返還を主張していたが、ブロンズ像は1体あたり1570万ユーロ(約19億3000万円)で落札された。

 しかし2日になって、中国の著名な古美術品収集家で民間組織「海外流出文化財救出基金(National Treasures Fund)」の顧問を務める蔡銘超(Cai Mingchao)氏が、自分が落札者であると名乗り出た。蔡氏は支払い能力がないと告白したことから、問題となっている。

 一連の事態についてベルジェ氏は、フランスのラジオ番組のなかで、「さほど驚いてはいない」と語った。「中国がブロンズ像を取り戻したかったならば、過去にいくらでも機会はあったはずだ。しかしそれができなかったので、落札する可能性がある人に落札しないよう圧力をかけたのだろう」

 ベルジェ氏は蔡氏が支払いを拒否するならば、ブロンズ像は2体とも自宅に持ち帰ると話した。「2体の像はずっと私の家に置かれていた。そこがブロンズ像が帰るべき場所なのだ。わたしはブロンズ像と共に暮していく」(c)AFP