【11月13日 AFP】ドイツ・バイエルン(Bavaria)州の図書館は12日、ナチス(Nazis)が1933年にノーベル賞作家トーマス・マン(Thomas Mann)の自宅から没収した蔵書75冊をスイスに譲渡すると発表した。

 この75冊は、1900年から30年ごろにかけて、マンの作品を数か国語に翻訳したもの。2冊にはマン自筆のサインがあり、そのほかの数冊には翻訳者がマンに宛てた献辞が記されているという。19日に引き渡されたあと、アーカイブとして保存される。

 反ナチスの姿勢を取っていたマンは1933年、蔵書の半数以上を抱えてミュンヘン(Munich)の自宅を去り、チューリヒ(Zurich)に移住した。

 その後、自宅に押し入ったナチスは、残された蔵書を没収し、一部をバイエルン州の図書館に置いた。

『ブッデンブローク家の人びと(Buddenbrooks)』や『ヴェニスに死す(Death in Venice)』などの名作を生み出したマンは、1929年にノーベル文学賞を受賞している。

 1936年にドイツ国籍を剥奪され、39年から52年まで米国で亡命生活を送った。55年、80歳のときにスイスで死去した。

 ドイツ当局は1999年、ナチスが没収した文化遺産の行方を調べ、返却すると発表していた。(c)AFP