シリアで遺跡修復に力注ぐアーガー・ハーン氏、イスラムへの理解促す
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【9月18日 AFP】シリアの古代都市アレッポ(Aleppo)の要塞、暗殺活動を行っていたアサシン教団の本拠地マスヤフ(Masyaf)の砦、サラディン(Saladdin)城が、イスラム教イスマイル派指導者で富豪のアーガー・ハーン(Aga Khan)4世(71)のプロジェクトにより息を吹き返そうとしている。
前年に指導者就任から50周年を迎えたハーン氏は、自身の「アーガー・ハーン・ トラスト・フォー・カルチャー(Aga Khan Trust for Culture)」財団のこうした修復プロジェクトの目的について、「イスラム文化の豊かさを全世界に知ってもらうため」と説明している。「世界は、イスラムの歴史も、文学も、哲学も、物理的環境も知らない。それがウンマ(イスラム共同体)への誤った解釈につながるのだ」。
シリア当局の協力のもとで行われているこのプロジェクトは、遺跡の修復のみならず、観光客がより訪問しやすくなるように周りの環境整備にも力を注ぐ。 「プロジェクトを通じて、ウンマに対し、『一緒に文化の復興に努めよう』と呼び掛けたい。『近代化』が単に西洋の語彙(ごい)というだけではなく、われわれの過去を知的に活用する行為でも示されるように」とハーン氏。
米経済誌「フォーブス(Forbes)」の世界の王族長者番付11位にランクインしているハーン氏は、推定10億ドル(約1040億円)の資産をバックに、遺跡の修復以外にも保健衛生、教育、建築などの振興につとめている。貧困家庭の生活向上も重要課題だ。ハーバード大学(Harvard University)でイスラム史の学位をとったが、本当は建築家になりたかったのだという。 「イスラム教では、貧しい人々が自立できるよう支援することが最良の慈善活動だとされている。裕福であることは、それが社会的・倫理的な価値を持つ場合は悪いことではない。だから財団を作ろうと思った。イスラム教の価値観をもとに日常の問題に対応できるような財団をね」
シリアにおけるプロジェクトは、宗教と文化の架け橋をするという意味合いもある。「シリア国民の多くはスンニ派だが、シリアはあらゆる宗教が共生できる場所を目指している」とカーン氏は語った。(c)AFP