【8月30日 AFP】片手にビール、もう一方の手にタマゴを握り、十字架にはりつけにされた緑色のカエル――。イタリアのサンドロ・ボンディ(Sandro Bondi)文化相は28日、同国北部ボルツァーノ(Bolzano)の公営美術館に展示されたこのカエルの彫刻が、敬けんなキリスト教徒の気持ちを傷つけているという声明を発表した。

 この作品が「十字架を神の愛の象徴だと考える多くの人々の宗教心を傷つけている」と述べたボンディ文化相はさらに、展示している美術館についても「無駄な挑発」を行っていると激しく非難した。

 地元の政治家からの圧力を受け、美術館はこの彫刻を建物の入り口から3階の展示スペースへと移したが、展示を中止することは拒否している。この作品は9月21日までのテーマ展に出品されている。

 美術館の学芸員は、この作品は危機的状況にある作者自身を表現したものだと語っているが、Luis Durnwalder県知事は、カトリック教徒が圧倒的に多いこの地方で挑発的だとして批判している。

 この彫刻の作者はマルティン・キッペンベルガー(Martin Kippenberger)。ドイツ西部ドルトムント(Dortmund)に生まれ、ハンブルク(Hamburg)、ベルリン(Berlin)、パリ(Paris)、ケルン(Cologne)などで暮らし、1997年に44歳で死去した。絵画、彫刻、写真などに取り組み、ロンドン(London)のサーチ・ギャラリー(Saatchi Gallery)に所蔵されている作品もある。(c)AFP