【6月6日 AFP】70年前イタリア軍に持ち去られ、3年前に里帰りを果たしたエチオピア北部アクスム(Axum)のオベリスク(花崗岩の石柱)の復元作業が、4日開始された。

 ユネスコ(UNESCO)の復元プロジェクト長、ナダ・アル・ハッサン(Nada Al Hassan)氏によると、同日は現場の検証作業が行わた。5日には最初のブロックがクレーンなどを使って基礎部分に固定されるという。


 オベリスクは3世紀のもので、高さ24メートル、重さ150トン。現在世界遺産に指定されている「アクスムの考古遺跡」にあったものだが、1937年、エチオピアの植民地化を企図していたイタリアの時の独裁者、ベニト・ムソリーニ(Benito Mussolini)の命で兵士により持ち去られた。

 返還は1947年に合意されたが、オベリスクはその後も国連食糧農業機関(UN Food and Agriculture OrganizationFAO)ローマ(Rome)事務所の前に立ち続けた。返還されたのは2005年になってからのことで、3つのブロックに分けてエチオピアに輸送された。

 復元プロジェクトは、これら3つのブロックを元あった場所に建てるというもので、数百万ドルが投入されている。2つめと3つめのブロックはそれぞれ7月中旬と下旬に設置されることになっており、完全に復元されたオベリスクは、9月10日に一般公開される予定だ。

 アクスムのオベリスクは、アクスムの考古遺跡、ラリベラ(Lalibela)の十字架と並んで、国のシンボルであり、国の第一級の宝にもなっている。 

 国会議員のNetsanet Asfaw氏は、AFPに対し、「オベリスクはエチオピアの重要な遺産の1つ。(イタリア軍の略奪から)守れなかったのは痛恨の極み。オベリスクは、戦争、苦悩、略奪、ファシストの残虐行為についてのわれわれの記憶でもある。とにかく返却されたので、われわれの心は休まりつつある」と語った。(c)AFP