【4月25日 MODE PRESS】都内・表参道の商業施設「ジャイル(GYRE)」で4月19日~6月1日まで、同施設と「国境なき医師団日本(Médecins Sans Frontières Japan)」による写真展TUMAINI(トゥマイニ=hope) 命をつなぐ ―ケニア、エイズ治療の現場から― が開かれている。これに先駆け18日、同会場で記者会見が行われ、ドキュメンタリー写真家のマティアス・シュタインバッハ(Matthias Steinbach)氏と国境なき医師団日本のエリック・ウアネス(Eric Ouannes)事務局長らがイベントをアピールした。

■消費活動を人道援助に活かす

 ジャイルは、「SHOP & THINK」をテーマに「世界を意識した消費への呼びかけ」を行っている。この理念を基に、携帯を使ったポイントサービスを提供。同施設来場、購入の際に登録済みの携帯電話をセンサーに当てるとポイントが貯まるという仕組み。貯まったポイントは年2回、6月と12月に国境なき医師団へ寄付される。

 ジャイルと国境なき医師団のコラボ活動をアピールする主旨の下、行われたのが開催中の同写真展。HIVと結核に二重感染した患者、小児病棟に入院する子どもたち、母子感染の予防治療を受ける母親の肖像など、国境なき医師団のケニアにおけるエイズ治療の現場を、写真を通して伝えている。

■ふらりと立ち寄った人にも知るきっかけを

 国境なき医師団日本のウアネス事務局長は「このような場所を借りることができて光栄だ。ケニアの実情を知ってもらうためにも、我々の活動を日本の人々に伝えていく必要がある」と話す。さらに、「我々はHIV/エイズ治療を10年以上にわたり行っており、活動全体の約30%を占めている。現在、薬剤耐性によって通常の治療薬が効かなくなった患者が増加しているが、効果的な第二選択薬と呼ばれる治療薬に切り替えるには、10倍以上の費用がかかる。貧困地域の人々も先進国と同等の治療が受けられるように、より安価な治療薬の開発が求められている」と語った。

 展示作品を手掛けたシュタインバッハ氏は、「今回自分が撮った写真がこのような形で人に見てもらえることを嬉しく思っている。撮影で気をつけたのは、被写体の気持ちを尊重すること。写真を撮らずに1日中患者の側に座っていた事もあった」と話す。

 不特定多数の人々が立ち寄るジャイルで、この種の写真展を行うことは、遠い国で起こっている現状に触れる機会のなかった人にも、知るきっかけを与えてくれる。しかし、ウアネス事務局長は「写真展で伝えられることは限られている。さらにメディアを活用し、様々な場で状況を伝えていく必要がある」と、さらに意識を向上させる必要性があることを強調した。

■先進国のなかでも低い日本での認知度

 世界19カ国に支部を持つ「国境なき医師団(Médecins Sans Frontières)」は、幅広い人道援助活動を行っていることで知られる団体だが、日本での知名度は高いとはいえない。2004年に開かれた愛・地球博などでのイベント主催はあるものの、今回のような第3者を交えた企画は初めてで、認知度の向上に繋がる事を期待したい、と井田覚(Ida Satoru)会長は話している。

 現在、世界では毎日1000人の子どもがエイズで亡くなっている。HIVに感染している推定230万人の子どものうち87%がサハラ以南のアフリカで暮らしているという。(c)MODE PRESS