【AFP】「ハリー・ポッター(Harry Potter)」シリーズの著者J・K・ローリング(J.K. Rowling)氏が14日、同シリーズの非公認百科事典の発売を計画している米出版社RDR Booksを知的財産権侵害で訴えている裁判の審理に、証人として出廷した。

 マンハッタン(Manhattan)地方裁判所で同日始まった裁判は、一週間続くと見られている。証言台に立ったローリング氏は、「子どもたちは例外として、この作品シリーズは私の人生のすべて。百科事典は、私の17年の努力を持ち逃げする泥棒のようなもの」と訴えた。百科事典の発売を知ったときは「非常にショックだった」という。

 問題となっている百科事典『Harry Potter Lexicon』は、Steve Vander Ark氏が作成したもので、RDR Booksが1冊24.95ドル(約2500円)で出版を予定していた。

 ローリング氏は提訴した理由について、金銭的な補償が目的ではなく、同百科事典が物語の登場人物の高潔さと彼らが生きるフィクションの世界を変えてしまうためだと述べた。

 また、ローリング氏と映画版を手掛けるワーナー・ブラザーズ(Warner Brothers)は、同百科事典が作品の品位をおとしめていることが提訴の理由だとしている。

 これに対し、Ark氏の弁護人は、「百科事典は本や映画の手助けになるもので、原作を損なうことはなく、より多くの楽しみを得るものだ。この本が出版されなければ、ファンは便利なガイド本を失うことになる」と反論。

 さらに、ローリング氏に百科事典の出版を差し止める権限があるかとい疑問を投げかけ、百科事典はシリーズ中のどの本の代用品にもならないと主張した。

 Vander Ark氏は、同氏弁護人によると、ローリング氏を尊敬しており、同シリーズの本を何度も読み直したり、ハリー・ポッターに関するホームページを作るほどだという。しかしローリング氏は、「過去に同ホームぺージに協力したこともあったが、百科事典の発売を知ったときには裏切られたと感じた」と述べている。

 ローリング氏自身も登場人物や事件を解説する百科事典の出版を2-3年後に仕上げる計画だという。売上げは子どもたちのチャリティーに使われる予定。

 地味な色の縦じま模様のスーツで出廷したローリング氏は、「初めての出廷で緊張している」と話しつつ、「『Lexicon』には品質がない。Vander Ark氏が原作を理解していない部分が数箇所ある」と訴え、Ark氏の百科事典を「芸術性のない詐欺まがいの作品だ」と非難した。(c)AFP