【3月1日 AFP】(3月2日 写真追加)第2次世界大戦中のベルギーで、両親をナチス(Nazis)に連行されオオカミに育てられたという実話を元にした物語『少女ミーシャの旅』の著者ミーシャ・デフォンスカ(Misha Defonseca)氏が、「自伝」はフィクションだったと認めた。ベルギーの日刊紙「ルソワール(Le Soir)」が28日、報じた。

 物語では1941年、両親をナチスに連行された8歳の少女ミーシャが、オオカミの群れの一員となって、ベルギー・ドイツ・ポーランドを3000キロにわたり旅し、両親を捜す。この本はベストセラーとなり、映画化もされた。

 しかし、現在米国で暮らすデフォンスカ氏が同紙に発表した声明によると、両親がブリュッセル(Brussels)でナチスに連行されたのは本当だが、その後祖父とおじの家を転々とし、ひどい扱いを受けていたという。

   「ねつ造」疑惑が持ち上がったのは、デフォンスカ氏の本名がモニク・ド・ワエル(Monique de Wael)であることが明らかになったことがきっかけ。「ド・ワエル」はユダヤ名ではなかったためだ。さらに、出生記録によると同氏は1941年にはわずか4歳だった。

 デフォンスカ氏は声明で、「わたしには実際の出来事と自分の内部で起こっていることの区別が付きにくい時期があった」としたうえで、「この本はわたしが作った物語だが、現実に基づいていないにしても、わたしが嫌悪する者と自分を切り離して生きていくために必要な『真実』だった」と主張。さらに「裏切られたと感じた読者には許しを請いたい。でも、たった4歳ですべてを失い、生きていかなければならなかったわたしの気持ちを察してほしい」と述べた。

 デフォンスカ氏は、一家は戦時中ベルギーから移送され殺害されたものの、ユダヤ人ではないことも認めた。

 2月にフランスで行われた物語を原作にした映画の上映会で、デフォンスカ氏は、「わたしの1番大切なお守り」として、旅で使用したとされる小さなコンパスを手に登場した。また、今回「ねつ造」を認めるまで同氏は、人々の疑惑に深く傷つけられたと語っていた。

 デフォンスカ氏は、自分は物語の出版を望んでいなかったが、米国の編集者に説得されたと主張している。(c)AFP