【1月9日 AFP】千年の歴史がある「裸祭り」の伝統が、時代の変化の壁に阻まれた。JR東日本(JR East)が、岩手県奥州市に伝わる伝統行事のポスターを「不快感を与える」として掲示を拒否していたことが明らかになった。

 掲示を拒否されたのは岩手県奥州市水沢区黒石町にある黒石寺(こくせきじ)で毎年2月に行われている「蘇民祭(そみんさい)」の宣伝ポスター。ふんどし姿の男性たちが厳寒の深夜、幸運を願い、もみ合いながらお守りの入った「蘇民袋」の争奪戦を繰り広げる。2008年は2月13日に予定されている。

 同市はこの祭りのポスターを数十年来作製しているが、JR東日本( East Japan Railway)が掲示を拒否したのは今年が初めてだという。今年のポスターでは「胸毛の濃いひげ面の中年男性」が「ほえている」後ろに、ふんどしをまとっただけの男性たちが写っている。

 同地域担当のJR東日本盛岡支社は、ポスター掲示がセクハラにつながるかもしれないと判断したという。同社広報室は「駅はいろいろな人が利用する。このポスターのデザインに不快感を持つ人も出てくる可能性は高い」としている。銭湯や温泉がある日本でも、公衆の面前で裸になることはますますタブーになりつつある。

 奥州市の同祭開催担当者は、JR東日本に対し昨年11月に、例年どおりポスター600枚の掲示を申請した。しかし今年は同社から図柄の変更を求められ、市では元はまったく何も身につけていなかった男性たちの写真に、白い下帯を加える修正を行った。

「それでもポスターは却下された。コストの問題や祭りの日程が迫っていることもあり、それ以上の修正はあきらめた」と市担当者はいう。駅構内に掲示されるポスターはいつも多くの人の目にとまるため、市としては非常に残念だと述べた。

 JR東日本ではクレームの対象を特定していないが、ポスターに写っている中年の男性本人は、東アジアでは珍しい自分の「濃い」胸毛が抵抗感を招いたのではないかと疑っている。祭りに参加し始めて20年のベテランのこの男性はTVのインタビューに対し「まったく個人の好き好きの問題だから、自分は気にしない」と述べた。(c)AFP