【10月16日 AFP】仏映画界を代表するスター俳優アラン・ドロン(Alain Delon、71)が所蔵してきた美術品約40点が15日、パリ市内で行われたオークションに掛けられ、予想落札価格を上回る計870万ユーロ(約14億5000万円)で競り落とされた。

 最高値が付いたのは、ジャン・ポール・リオペル(Jean-Paul Riopelle)の絵画『鳥の谷(La vallee de l'oiseau)』で、88万2740ユーロ(約1億4700万円)で落札された。  ピエール・スーラージュ(Pierre Soulages)の1950年の無題作品には78万1976ユーロ(約1億3000万円)、カレル・アペル(Karel Appel)の『La famille(The Family)』には65万8820ユーロ(約1億1000万円)の値がついた。

 同オークションを開催したのは、仏競売商コルネット・ド・サンシール(Cornette de Saint Cyr)のアルノー・コルネット・ド・サンシール(Arnaud Cornette de Saint-Cyr)氏。同氏の父親ピエール・コルネット・ド・サンシール(Pierre Cornette de Saint Cyr)氏は、ドロンの長年の友人だという。「競売は成功だった。珍しくて素晴らしい作品が揃ったので、中国、ベネズエラ、米国、欧州各地に売れた」と語った。

 ドロンは美術愛好家で、この40年間、熱心に17世紀から20世紀の作品を収集し、フランスやスイスに所有する自宅に飾っていた。今回オークションに掛けられたのはその一部で、ハンス・アルトゥング(Hans Hartung)、ニコラ・ド・スタール(Nicolas de Stael)、スーラージュらの1950年代の油彩画。ドロンは11日にAFPのインタビューに答え、「売却すると決めたのは僕だ。悲しくはないさ」と語ったが、売却する理由についてはそれ以上のコメントを控えている。

 ジャン・クロード・ブリアリ(Jean-Claude Brially)やフィリップ・ノワレ(Philippe Noiret)、ミシェル・セロー(Michel Serrault)ら仏俳優が最近死去したことが、ドロンが所蔵品の売却を決めたことが一因ではないかと、ピエール氏はみている。「『ドロンの遺産セール』なんて耐えられない、と彼(ドロン)は言っていたよ」とピエール氏は語った。

 ドロンが最初に絵画を購入したのは1964年。ルキノ・ヴィスコンティ(Luchino Visconti)監督の『山猫(The Leopard)』に出演した直後で、購入した作品はMicco Spadaroの17世紀のスケッチ画だった。ピエール氏など友人らからのアドバイスで、ドロンはビンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)などのスケッチ画も購入した。

 油彩画については、ジャン・フランソワ・ミレー(Jean-Francois Millet)、ウジェーヌ・ドラクロワ(Eugene Delacroix)、テオドール・ジェリコー(Theodore Gericault)などの作品を所有。そのほかレンブラント・ブガッティ(Rembrandt Bugatti)の彫刻などを購入していた。

 今回のオークションの落札者の中には、北欧の美術館やロシアや英国のコレクターも含まれていた。(c)AFP