【10月13日 AFP】(一部更新)「醜さは、美しさよりも興味深いテーマだが、バーブラ・ストライサンド(Barbra Streisand)の特殊な魅力ほど複雑ではない」。イタリア人作家で文学研究者のウンベルト・エーコ(Umberto Eco)氏が11日、最新刊『On Ugliness』で取り組んだテーマ、「醜さ」について語った。

■「美しさは退屈、醜さは無限に多様」

 エーコ氏は「美しさはしばしば退屈だ。バービー(Barbie)人形のような美しい鼻は高いだけだが、醜い鼻は無限の多様性をもっている」と語る。

 エーコ氏によると醜さは「倫理的な争い」を象徴し、そのさまざまな定義により多数の序列的差異が生み出されるという。

 イタリアで先週発売された最新刊『On Ugliness』は、2005年のベストセラー『美の歴史(History of Beauty)』に続く作品。『美の歴史』は27の言語に翻訳され、全世界で50万部を売り上げた。

 代表作『薔薇の名前(The Name of the Rose)』の著者として知られるエーコ氏は、醜さについて書く場合は「性的な欲望に邪魔されることがなく」集中しやすいことが分かったと語る。

■美醜に続く次のテーマは「品のよさ」

 そんなエーコ氏が究極のテーマと考えるのが「品のよさ」だ。

「バーブラ・ストライサンドとジェラール・ドパルデュー(Gerard Depardieu)は美しくはないが、品のよさが漂っている」(エーコ氏)

「品のよさ」は「美しさ」と「醜さ」との間に横たわる、グレーゾーンの存在をあらためて示すものだという。

「世界を美醜で分かつことはできない。その間には、例えばわたしがいる」

 エーコ氏は世界最大のブックフェア、「フランクフルト・ブックフェア(Frankfurt Book Fair)」に出席するため、ドイツのフランクフルト(Frankfurt)に滞在中。

 この日発表されたノーベル文学賞(Nobel Literature Prize)候補の1人と注目されていたが、受賞したのは英国の作家、ドリス・レッシング(Doris Lessing)氏だった。

 フランクフルト・ブックフェアは今月14日まで。(c)AFP