【8月29日 AFP】イラクの旧アブグレイブ(Abu Ghraib)収容所で発生した米軍兵士によるイラク人捕虜への虐待に発想を得たコロンビアの画家フェルナンド・ボテロ(Fernando Botero)氏の作品が、カリフォルニア大学(University of California)に寄贈される。同大広報担当者が28日、明らかにした。

 現在、寄贈に向けた最終調整の話し合いが行われているという。

 ボテロ氏は生存する最も成功した中南米アーティストとして知られ、その作品はオークションでも人気が高く100万から200万ドル(約1億1500万円から2億3000万円)の値がつくほどだ。

 今回、カリフォルニア大に寄贈される作品は絵画25点と素描22点で、アブグレイブでの虐待の様子を撮影した写真や被害者の証言に触発され、拷問、性的辱めなどの虐待の様子を描いたもの。

 吠えるイヌをけしかけられたり裸にされ収容所の独房に折り重なるイラク人収容者を描いた一連の作品は、極端にふくよかにデフォルメされた人物描写を得意とする同氏の画風とは一線を画すものとなっている。

 推定総額は1000万ドル(約11億4200万円)から1500万ドル(約17億1300万円)にも上るとみられる。寄贈作品は大学内の美術館が保管する。

 一方、ボテロ氏は「アブグレイブ・コレクション」を売る気はないようだ。

 ドイツのシュツットガルト(Stuttgart)近郊のKunsthalle Wurth美術館が、改装に伴い「アブグレイブ・コレクション」の購入をボテロ氏に申し出たが、同氏は「当事国の米国かイラクのバグダッド(Baghdad)が保管すべきだ」として、これを断った。

 カリフォルニア大への寄贈を前に、「アブグレイブ・コレクション」は2005年から欧州各地を巡回し、現在はイタリアのミラノ(Milan)の同氏回顧展で展示中だ。しかし、米国内の美術館は多くが公開を見送ったという。(c)AFP