【8月17日 AFP】(一部更新)ロック歌手エルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)の没後30年を迎えた16日、故郷である米国テネシー(Tennessee)州メンフィス(Memphis)のエルビス邸「グレースランド(Graceland)」で追悼式が開かれた。前夜からファン数万人がキャンドルを手に詰め掛けた。

 ファンらはバラの花やテディベアのぬいぐるみを手に、邸宅の車道から墓地まで、終わりのない長い列を作った。白い柱が特徴のエルビス邸は、住人が今もいるかのように夜通しライトアップされた。邸宅を囲んだファンの列からは、エルビスをしのんで彼の曲を歌う声が響き渡った。

 プレスリー一族の眠る墓地や周囲の路上にはベルギーからは黄色い馬、フランスからは風車、ブラジルからは紙製の国旗など、世界中のファンが持ち寄った手作りの記念の品が捧げられた。

■国内外から熱烈なファンが集合

「エルビスが大好きなので、毎年ここへ来ています」と言うのは、エルビスの墓地を訪れた日本人のフナバシ・ヨウスケさん。数年前メンフィスに移住し、現在は市内で「ラブ・ミー・テンダー(Love Me Tender)」というエルビス関連の土産物販売店を営んでいるという。

 オハイオ州在住のBill Roweさん(57)は追悼式に一番乗りで参加するため、14日の夜中にグレースランドの塀の前に来て、日中は汗だくになりながら並んだという。エルビスが死去した1977年以来、追悼式には毎年参加している。命日の夜はいつも一晩中起きているそうだ。「エルビス・プレスリー通りで眠るなんて無礼なことだ」とRoweさんは言う。

■史上最大の「エルビス・ウィーク」

 毎年8月、エルビスの命日を記念してメンフィスで開催される「エルビス・ウィーク(Elvis Week)」では、さまざまなイベント行事が行われる。ファンクラブのパーティ、本のサイン会、展示会、数百にのぼる出店、物まねコンテスト、学術討論会、追悼式…。これらのイベントは莫大な収益を上げる機会となる。今年は推定で7万5000人が現地を訪れたとされている。

 エルビス関連商品のライセンスを発行する「エルビス・プレスリー・エンタープライズ(Elvis Presley Enterprises)」の関係者によると、2007年はこれまでで最大規模のエルビス・ウィークと追悼式が行われたという。

■追悼式の参加者は推定5万人

 追悼式は15日の夕刻からスタート。グレースランドの門の前では大規模なパーティが夜通し繰り広げられた。エルビス・プレスリー通りでは、キャンプを張ったファンらが、古い映画を上映したり、エルビス風の衣装や記念の品をみせあったり、旧交を温めたりする場面も見られた。グレースランドの門が閉じられた翌16日午前7時(現地時間)までの11時間に、推定5万人が訪問した。

 年配の熱烈なファンの女性らも多数参加。1950年代、エルビスが社会の保守的な考え方や人種差別といった古い観念を打ち破ったころからのファンだ。驚くべき事に、エルビスが死去した当時、まだ子どもだった人たちも大勢参加していた。英国から来たというDebbie Quinn-Booth(38)さんもその1人だ。「エルビスはわたしのヒーロー。最愛の人です。上手く説明できませんが、彼には何か特別なものがあるんです。彼に敬意を表すために来ました」

 英国からも数千人のファンが、命日のためメンフィスを訪れているという。

 フランス人のGeorge Lassusさん(62)は、エルビスの魅力は永遠に尽きることがないと話す。「1960年代の(文化的)革命の時代にわたしたちは生きていました。エルビスがいなければ、私たちは今のような時代を迎えていなかったはずです」(c)AFP/Mira Oberman